本を読み取る技術
はじめに
本を開かずに中を読み取る技術が発表されました。
この技術は、MIT Media Lab、Ramesh Raskar氏のCamera Culture Groupらの成果です。フェムト秒カメラという、高速撮影ができるカメラが肝になっています。
仕組み
いろんな記事で解説されていますが、テラヘルツ波が光より透過性が高く、かつ電波よりも分解能が高いという特徴を活かし、本に当てたテラヘルツ波の反射波(インクありなしでずれる)をフェムト秒カメラで撮っちゃうことで文字を再現する(読み取る)という試みです。
ムービーを見るとわかりますが、基本原理はたった3ステップ!
- ページを見つける / Probabilistic Pulse Extraction(PPEX)
- 印字部分を検出する / Time-gated Spectral Imaging(TGSI)
- 文字抽出 / Cardinal Convex Sharp Composition(CCSC)
各パートではそれぞれPPEX、TGSI、CCSCという技術を適用しています。開くことができない古い貴重本に対して、テラヘルツ波を当てることが、どの程度許容されるのかわかりませんが、触れずに分析できるスグレモノです。
応用用途
この技術、文化財のような書籍に対しても有効そうですが、いわゆる自炊処理に応用できたら素晴らしいですよね。回転寿司屋さんで重ねたお皿のICタグを読み取るように、本を重ねておけば、その本のデジタルデータが抽出できちゃったりしたら、感動しそうです。
まだ9ページしか透視?できないし、もちろんOCRも精度完璧じゃないし、レイアウト解析も必要そうなので、置くだけ充電ならぬ、置くだけ電子書籍はまだ少し先かもしれません。でも、こういう技術の発想って、ワクワクしていいですね。
参考
▼フランク モス,Frank Moss,千葉 敏生著「MITメディアラボ―魔法のイノベーション・パワー」(早川書房)
Rameshの著作。読んでませんが、面白そう!
▼Ramesh Raskar,Jack Tumblin著「Computational Photography: Mastering New Techniques for Lenses, Lighting, and Sensors」(A K Peters/CRC Press)
戦略的に読書をするためにやったこと
はじめに
戦略読書の8か月にわたる取り組みを、ザックリと振り返ってみました。本当は半年で振り返るつもりだったけど、ズルズルしてて、変な時期になって振り返るという、アレな感じです。。
戦略読書とは?
三谷宏治氏が提唱する「他人と異なる独自の発想を生み出すために、戦略的に読書をしよう」というコンセプトのことです。
本では、「読書ポートフォリオ・マトリクス」や「ワリキリ読書」、「5つの視点での発見型読書」等々、戦略読書のための作戦がたくさんまとめられています。自分は、これらの発想がたいそう気に入りまして。で、今年1年実践してみようとなったわけです。
事前の準備
今回やったことは以下の3点です。
- 年間読書時間の試算
- 読書ポートフォリオ・マトリクスの作成
- 本のライフサイクル整流化
年間読書時間の試算
時間確保のため、使える時間を試算しました。結果、おおよそ400時間。1冊4時間で読破するとして、年間100冊読める計算です。
表1.確保できそうな時間
1日あたりの読書時間 | 日数 | 読書時間 | |
---|---|---|---|
平日 | 80分 | 215日 | 287時間 |
休日 | 60分 | 150日 | 150時間 |
合計(年間) | 437時間※ |
※丸めて400時間。さらに400÷4=年間100冊。
読書ポートフォリオ・マトリクスの作成
読書ポートフォリオ・マトリクス(RPM)は読書の資源配分を明確にするものです。以下の4象限にわけ、それぞれエイヤっと配分しました。
ビジネス基礎 | 200時間 | 経営20冊、情報工学20冊 |
ビジネス応用 | 80時間 | 成功・失敗事例等、個別の情報系専門書 |
非ビジネス基礎 | 60時間 | 科学系/歴史系/小説、マンガ |
非ビジネス新規 | 60時間 | 流行本、個人的に気になった本 |
本のライフサイクル整流化
より読書に注力できるよう、本そのもののライフサイクルを見直しました。各ステップと、todoは以下のとおりです。
表3.本のライフサイクル
(1)入手 | いろいろな書籍情報はいったんamazonリストに集約 |
(2)保管 | 手に入れたが未読の本は、積読場所を決めて集約 |
(3)活用 | ここはあとでまとめる(と言ってまとめてない・・・) |
(4)保存 | 本棚を大まかなジャンルに分け、各棚は超整理法的に使用 |
(5)廃棄 | 超整理法で抽出された、処分対象本のルールを構築 |
毎月、定点観測
実際の戦略読書状況は、毎月「定点観測」として、本ブログで公開しています。試行錯誤しつつでしたが、最近はだんだんと観測内容が定まってきました。
表4.定点観測
読んだ本の紹介 | アフェリエイトリンク。内容を忘れないように、簡易書評付きで紹介 |
定量分析 | 毎月・累積の読書時間/冊数のグラフ化と、年間の読書時間/冊数の予測値を計算 |
気付き | 毎月の活動を通じて得た感想や改善点などを書いておく |
考察
とまぁ、戦略的に読書をするためにいろいろ試しながら進めています。うまくいってるなぁという点と、これは改善の余地があるなぁという点、それぞれ挙げてみます。
うまくいってる点
- とにかく本を読む量が増えている
- いろいろなジャンルの本に興味が出てきた
- 読み方のコツがわかってきた(気がする)
改善の余地がある点
- 読む本のバランスが悪い:ビジネス基礎本の少なさよ・・・
- マンガ問題:文字ものとは別に考えたほうがいい量になってるかも
- Amazonリストの整理:ちょっと複雑すぎた。(1)未読(購買予定)(2)未読(図書館貸出)(3)読了、くらいがいいかも
- 本棚の整理:ちょっと複雑すぎた。『レバレッジ・リーディング』を参考に整理し直すのがいい。
戦略読書について、今年1月からの活動をざっと振り返ってみました。粗々ではありますが、少しずつ他人と異なる独自の発想を生み出すための読書に近づければいいな、と思います。まだ実感はわいていませんが。
残り4ヶ月(いやもはや約3ヶ月か)、改善の余地がある点、少しずつ試行錯誤しつつよりよい読書を心がけたいものです(たぶん、来年もつづけます)。
参考
『戦略読書』定点観測 - 2016年8月
はじめに
戦略読書・8月の定点観測です。
図1は、読書ポートフォリオ・マトリクス(PRM)を整理したものです。
定点観測(2016/08)
上記RPMに基づいて実施した8月の定点観測結果です。
ビジネス基礎
なし
ビジネス応用
▼佐々木 圭一著「伝え方が9割 【「伝え方が9割 2」試読版付き】」(ダイヤモンド社)
読むの2度目。平易な語り口で、テクニックを織り込んだ文章も紹介しているところがわかりやすい。ノーをイエスに、とか、強いコトバ、とか。こういうロジック、情報技術的に取り込んでみたいところ。
非ビジネス基礎
先月読んだ分の残りを一気に読んだ。夏休みならでは。三億円事件がここまで深みと広がりを持つとは。こういう異説って本当に面白い。多少突拍子もないところも含めて、エンターテインメントだと思う。
▼よしもと ばなな著「さきちゃんたちの夜 (新潮文庫)」(新潮社)
人生にはいろんなことが起こる。それらを受け止めたり、流したり、改善したり。目立たないけど、ちゃんとしてる人たち。そんな人たちの物語が重なって、とても心が晴れやかになるから不思議。
▼荒木経惟著「いい顔してる人 生き方は顔に出る!」(PHP研究所)
天才写真家・アラーキーの顔論。顔って不思議だよなぁ。思えば、自分の好きなのも、大抵人(顔?)が写ってる作品かも。顔って思っているよりも得られる情報が多い部分なんだろうな。刺激的で。
▼丘 修三,かみや しん著「ぼくのお姉さん (偕成社文庫)」(偕成社)
次の一節は解説からの抜粋。「著者は、障害者と非障害者との間でのコミュニケーションの困難さを、重要な問題としてまず認識する。そしてその上で、コミュニケーションを成立させなければならないという思想を強く提示するのである。」コミュニケーションを成り立たせるためには、いろんな経験・体験を通じて、人の心の痛みがわかるようにならないと、ね。
▼大今良時著「聲の形(1) (週刊少年マガジンコミックス)」(講談社)
異物を排除する文化は、後述のコンビニ人間に通じるものがある。耳の聞こえない少女と、その子をいじめたことでいじめの対象となった男の子が、どう変化していくのか楽しみ。
▼筒井哲也著「予告犯 1 (ヤングジャンプコミックスDIGITAL)」(集英社)
▼筒井哲也著「予告犯 2 (ヤングジャンプコミックスDIGITAL)」(集英社)
▼筒井哲也著「予告犯 3 (ヤングジャンプコミックスDIGITAL)」(集英社)
これは本質的なメッセージだと思う。「それが誰かのためになるという間違いのない確信を得た時 人は利得を超えた行動をとることがある」しかし、監視カメラの威力って凄いなー。街のカメラが4K8Kになっていったら、行動トレースなんて、容易にできちゃうな。
命とは。生きるとは。映画も見たけど、マンガのほうがいい。断然。揺さぶられます。
非ビジネス新規
コンビニという清潔な箱。社会や会社への帰属意識の醸成装置。異物を排除し続けると、結局、みんなが大事にしたい個性が失われていくことになるのだろうか。いや、もう既にある側面では失われているのかも。
▼みしぇる著「シンプル生活 55のヒント 家事がラクになる、心が軽くなる」(SBクリエイティブ)
最近気になっているミニマリスト系の本。ライトなミニマリストを目指して、実践したくなる。禅の心持、もっと深く知りたいかも。
▼本田 直之著「レバレッジ・リーディング」(東洋経済新報社)
これは実践あるのみ! まずはこの本のレバレッジ・メモを作ろうと思う。後ほど書評にまとめる予定です。
分析
以下は、8月のRPM分布と、累積(1~8月)のRPM分布です。
今のところ、以下のような実績と予測になっています。
実績
冊数 | 時間 | |
---|---|---|
8月 | 35冊 | 42時間 |
1~8月 | 131冊 | 263時間 |
予測
年間冊数※1 | 総読書時間※2 | |
---|---|---|
予測値 | 196.5冊 (月平均16.375冊) |
394.5時間 (月平均32.875時間) |
※1 131冊÷8ヵ月=月平均16.375冊、16.375×12ヶ月=年間冊数196.5冊
※2 263時間÷131冊≒1冊あたり約2時間、約2時間×196.5冊≒394.5時間
ということで、7月とは打って変わり、当初目標の100冊・400時間はだいぶ達成できそうな感じになってきました。なぜなら、8月は夏休みに読書三昧の毎日を過ごしたからです(まぁ、マンガ・非ビジネス系がほとんどだったのですが…)! 7月の鬱屈とした日々を取り戻すかのように、大いに楽しい読書ができました。
読書っていろいろな側面があると思います。論旨を把握したり、新たな知識を吸収する楽しさもありますが、心の栄養と言いますか、物語を読むことで豊かな気持ちになったりもできる。8月はどちらかというと、後者を楽しめたのだと思います。
ちなみに、6月から試験導入していたaudibleは、聴く読書にまとめ、解約しました。コンテンツのラインナップとか、オーディオ機器の新調等、なんらかのタイミングで復活するかもしれませんが、今のところ未定です。
気付けば、今年も2/3を過ごしてしまったのですね。半年振り返りもできなかったなぁ。。9~12月の残り1/3、今年の戦略読書の集大成に向け、楽しみながら進めていきたいと思います。
参考
読書的ニュース 2016-08
2016年8月の読書的ニュースです。
●アマゾン、発展途上国向けに読書基金を設立 数千台のKindle寄付へ | TechCrunch Japan
読書支援をしつつ、将来的にはAmazonを使ってもらえるファンも作る。とてもいい取り組みだと思う。発展途上国での読書プログラムを支援するWorldreaderって取り組みあるのか。どんなアクティビティなのか、調べてみよう。
●人工知能「零」が書き下ろした書籍「賢人降臨」--NTTドコモのdブックで独占配信 - CNET Japan
うーむ。たった2偏を使って学習?ちょっとよくわからないけど、、制作経緯なんかが書かれているってブログも仕組み等には言及してないし。。どんな文章に仕上がったのか読んでみたいかも。
●3分でわかる読書術!本を「段階的」に読んで、効率的に知識を得る|ビジネススキル大全|ダイヤモンド・オンライン
点検読書の紹介。世の中の「時間がなくて読書ができない人達」に必要なのは、『本を読む本』の点検読書レベルを習得しようという話。点検読書は短時間で本の全体像をつかむために、目次・前書き・後書き・帯・表紙・著者紹介等、本のメタデータともいうべき情報を丹念に読み込むことで全体を把握する手法。全体的に『レバレッジ・リーディング』をかいつまんで紹介したって感じかな。
▼J・モーティマー・アドラー,V・チャールズ・ドーレン,外山 滋比古,槇 未知子著「本を読む本 (講談社学術文庫)」(講談社)
▼本田 直之著「レバレッジ・リーディング」(東洋経済新報社)
●地元の名人が伝統を語り、高校生が書き記す。「聞き書き甲子園」で街おこし - ジモトのココロ(ジモココ)
高校生によるオーラル・ヒストリー・イベント「聞き書き甲子園」について。地域創生、文化継承などを、文字化することで促進するイベントに、感受性の高い高校生を適用させたところにこのプロジェクトの面白さがあると思う。認定NPO法人「共存の森ネットワーク」による。こういうの、どんどんやってほしいなぁ。
●小説をのぼりでアピールする - デイリーポータルZ:@nifty
小説の宣伝に、街頭で見かけるのぼりを適用。すごいアイデアだ。のぼりは裏からどう見えるかも意識する、と。協力してる立川オリオン書房ノルテ店さん、いつも柔軟な対応ですごいなぁ。こういう理解のある本屋さんって共感持てちゃう。
●本を読む姿勢が良すぎると頭がわるそうに見えるのはなぜか - デイリーポータルZ:@nifty
DPZ記事第2弾。姿勢が良すぎるとおかしく見える、かもしれないけど、これ、腕の高さも影響している気がする。背筋を伸ばす動作と、腕を地面と平行に上げる動作が相まって、おかしく見えるんじゃないかな。ってそんなマジメなコメント、いらないか。賢く見せるアイテムとしての読書、読書芸人の光浦さんも分析してたなぁ。
●小学校が読書感想文の解答マニュアル配布 「基礎教えるのに良い」「個性育たない」と賛否 - Excite Bit コネタ(1/2)
個性が育たないとあるが、個性っていうのは、基礎的な地盤の上に育つものだと思う。そして、今回の読書感想文マニュアルは、その基盤づくりに役立つもの。ここを否定してしまうと、何に基づく個性かわからなくなってしまう。ピカソがキュビズムの作品を作れたのも、青の時代やそれ以前に基礎的な技法をしっかりと学んでいるから。これは自明のことだと思うのだが。。
●町の書店、85%が「経営悪化」 存続の危機、実態調査で判明 - 共同通信 47NEWS
ネットの影響はかなり大きいと思うけど。。。大手取次の配本をそのまま置いていくスタイルも原因の一つなのではないかな。独自に本を集めてっていうのはハードルが高いんだと思う。でも、限られた資源(パッケージ化された配本)をいかに個性的な切り口で並べて、来店者にリーチするか。そんな編集技術は本屋さんならではだと思います。
●京極夏彦の(分厚い)小説にも対応!浴衣の生地を使った“ブックカバー”が優秀すぎる
浴衣生地を使ったブックカバー。本の厚さに可変でカバーをかけられるそう。判型にも可変なのかな。涼やかでデザインがかわいらしい。8/29現在、ECサイトでは売り切れ中なのが残念です。もう秋が近いしなぁ。
●ベビースターラーメンで文字は書けるか調査してみた - Excite Bit コネタ(1/3)
よく考えるなぁ。スゴイ。たしかに、にょろにょろしてて、文字の曲線に使えそうだもの。これ、おやつカンパニー社から公式フォントセットとして出ないかなぁ。
●LINE・メールの語尾は「!」か「。」どっちをよく使う? 大学生の多数派は - エキサイトニュース(1/3)
文末の句読点、感嘆符を用いることで与える印象の話。ネット上でのやりとりに、文末の「。」を付けない人もいる。あと、一部理系に多いのが、「、。」を「,.」で書く人。徹底してる人は、カンマとピリオドは半角で、そのあと半角スペースを空けたりする。論文の規定上カンマとピリオドが多いのはわかるんだけど、論文の時だけIME切り替えればいいし、日本語にカンマとピリオドって似合わない気がするんだよなぁ。。まぁ感覚的な話だけど。
●はあちゅう 公式ブログ - 体験型読書のススメ - Powered by LINE
少しずつ、内容が、作家から読者に直送で届くいう、このスタイルの読書、日常に馴染むと意外とクセになりますよー。
noteで少しずつ共有されていく読書の進め方。平野啓一郎『マチネの終わりに』が紙とネット、様々な媒体で行った実験的試みに近いのかも。
●【読書の効果は人間力アップにつながる!】本を読むことで得られるメリットとは|JOOY [ジョーイ]
なんだか、効果がたくさん書いてあったなぁ。。ざっと以下の5点かな。
- ストレスを解消する効果→サセックス大学のMindlab Internationalの報告
- 会話力をあげる効果→語彙・表現力の向上による
- 情報処理能力をあげる効果→いわゆる目利きの力が向上
- 視野を広げる効果→モノの見方が多角的になる
- 脳を活性化する効果→アルツハイマー等の予防に役立つ
●デザインドキュメンテーションにある制作と共有の課題 : could
Webサービス開発におけるコミュニケーションツールとしてのドキュメント。その作成を支援するツール類の紹介。いろいろあるんだなぁ。
あくまで、開発視点で使うと、こんな感じらしいです。このあたりの道具立ては、ドキュメントの目的に応じて取捨選択していく必要があるんだろうな。なかなかフクザツだ。
- Sketch:UI設計
- Craft:要素やインタラクションの追加等、Sketchのプラグイン
- Photoshop:UI設計
- Folio:版管理
- Zeplin:PhotoshopとSketchを連携できる
- Sympli:PhotoshopとSketch、Xcode、Android Studio等を連携できる
- Confluence:コード管理
- Jekyll:ドキュメントの作成管理
●キーパーソンインタビュー 締め切りは月に80回 作家・佐藤優さんの情報収集術
『読書の技法』で書いてあったことをかいつまんで話してくれている感じがした。
メディアリボーン考
はじめに
2016年6月~7月、日経新聞に「メディアリボーン、デジタル時代の出版再生術」という特集記事が組まれていました。
ウェブを通じた情報発信が容易となった時代において、出版はデジタルとどう付き合い、活路を見いだしていくのか。良記事だったので、記事の簡単な紹介(詳しくは各記事をお読みください)をし、考察してみたいと思います。
記事の紹介
- NextPublishing社の取り組み
- 同社の方針はデジタルファースト、ブックラスト
- 編集、制作、流通をデジタルで実施。要望に応じて、紙でも作る方式
- 楽天と組んで販路拡大。タイミングをつかむと売れる。多くて1万部と少部数だが、効率化で効果ありか
- 宝島社kippisの取り組み
- 付録作りで培った目利き力を持つ編集者がブランドを立ち上げ、日用品にライセンス供与
- 編集力とは、世界観を表現すること。近年はモノよりもコト。デザイナーを訪ねる旅、モノづくり体験教室等を企画している
- 出版(編集力)をコトを生む源泉と再定義すれば、紙やデジタルではない、新領域へのピボットも可能か
- ハースト婦人画報社MediaOSの取り組み
- 同社は読者に適切なタイミングで適切な内容を届けるためのCMSを活用
- このCMSでは、PV、流入、SNSシェア、他媒体記事閲覧、デジタル広告マネタイズ(Shared Spaces)等、マーケティング調査が可能
- ウェブ雑誌コスモポリタンにおいて、CMSを活用した結果、UU49%up、PV42%upという実績を作った
- 原則は1日10本だが、臨機応変に編集力を持つ人が発信状況を変えていける仕組み
考察
紹介されたいずれの会社も、本が売れない、という大きなうねりの中、なんとか出版社の強みを武器にしようと取り組んでいる様子がみてとれました。
これらの記事を通じて、doksyo-tekが感じたキーワードは3点です。
つまり、(A)編集、(B)変換、(C)蓄積、です。一言にするならば、膨大な情報(データ、に近いかもしれません)から意味を見いだし、読者に届く情報に変換し、それをいつでも引き出せるように蓄える、ということです。この3点を着実に実施することで、まさにメディアリボーンが可能なのではないかと思います。
(A)編集
ここでもっとも重要になってくる技術は検索技術です。Google検索のみならず、図書館や、図書館等で使える有償データベースなども駆使し、多様な情報源から意味のある情報を紡ぎ出す技術が求められると思います。
(B)変換
ここで必要になる技術はフォーマット変換技術です。ワンソースをマルチユースするのみならず、例えば機械学習によるラベリング、SNSでクラウド(群衆)が付けるハッシュタグ解析等を通じた画像⇔テキストの変換など、紡いだ情報を思い通りの形に変換できる技術が求められると思います。
(C)集積
ここは、日々のデータベースであると共に、後世に知識を伝えるデジタルアーカイブのような役割も持っているかもしれません。近年はバックエンドの仕組みはAWS等のクラウドに任せることが多くなってきましたが、時間軸という活用視点を手に入れるためには、10年、100年、1000年と保ち続ける、長期保存・活用の視点も必要かと思います。
まとめ
(A)~(C)が全てだとは思いませんが、逆に(A)~(C)の仕組みが活性化する、新しい読書技術について考えてみるのも面白いかもしれません(結局、読む対象となるコンテンツは、(A)~(C)を通じて生まれてこなければ読めません。だから、読む側から仕組みを活性化する技術があってもいい、でしょ??)。