読書的な何か。

読書と読書にまつわるテクノロジー、雑記など。

2015-01-01から1年間の記事一覧

紙とディスプレイ -表示媒体の違いにおける読みやすさ(4)

はじめに 前回の続きです。今回も下記論文のDigital reading(デジタル読書)に関する研究トピックスを読んでいきます。今回は研究トピックスその2「Print vs digital」です。 Ziming Liu: "Digital reading: An Overview", Chinese Journal of Library and …

拡張する書籍

"文章・絵画などを筆写または印刷した紙の束をしっかり綴(と)じ合わせ、表紙をつけて保存しやすいように作ったもの。巻き物に仕立てることもある。多く、雑誌と区別していう。書物。本。図書。しょじゃく。→電子書籍" これはコトバンクの「書籍」の定義です…

紙とディスプレイ -表示媒体の違いにおける読みやすさ(3)

おさらい 前々回は、紙とディスプレイの違いについて整理し、本を読むときの要素(注力できる要素⇔注意をそらす要素)に着目しました。 それを受けて前回は、認知科学系の論文を数本サーベイしました。 ディスプレイより紙のほうが文脈記憶や読解テストの結…

現代版・読書八境

市島春城の『読書八境』を読みました。青空文庫で公開されています。 本文は旧仮名遣いが多く(出版は昭和3年)、なかなか読みづらかったのですが、読書はシーンによって読み方が異なり、それらは大よそ8パターンに分類される、という内容でした。 以下に、…

本のつながり

過去2回ほど、本がリンクすることで生まれる体験について触れました。 doksyo-tek.hatenablog.com doksyo-tek.hatenablog.com 最近は、Quotleという面白そうなアプリも出ているみたいです。 jp.techcrunch.com このアプリ、InstagramとOneShotのハイブリッド…

紙とディスプレイ -表示媒体の違いにおける読みやすさ(2)

前回(4ヶ月前!)「ディスプレイ表示より紙のほうが理解度が高いという実験結果」について、こんなことを書きました。 これまで「読みやすさ」を文章の難易度という観点で見てきた(読みやすさの評価指標(1)、(2)、(3)) 実験に対するスラドの意見を…

本を探すということ

先日、料理というキーワードで小説を横断する企画についてご紹介しました。 このキーワードによる横断、言い換えれば、本が持つ表現内容をリンクしていくことで生まれる新しい体験について、少し考えてみたいと思います。 図書館にはテーマで本を探す件名検…

未来の本

▼「本とコンピュータ」編集室著「季刊・本とコンピュータ (第2期12(2004夏号))」(大日本印刷株式会社ICC本部) 本とコンピュータという雑誌をご存知でしょうか。この雑誌、今から10年ほど前に出版されていたものですが、「100年後、本はどうなる?」と題し…

文字で味わうキャンプ料理

今年の春くらいに発売になったブルータスのキャンプ特集雑誌。改めてペラペラ読み返していたら、「文字で味わうキャンプ料理」という面白い記事がありました。小説の中に登場する料理シーンを、オカズデザインさんが実際に再現するという企画です。 ▼マガジ…

短編ディスペンサー

先日キャラメル小説の話題を書いたばかりですが、類似サービスのニュースを読みました。その名も「短編ディスペンサー」! www.huffingtonpost.jp 市役所や公会堂など、人が集まる場所にレシートのような紙にショートストーリーを印刷してくれる機械を設置す…

キャラメル小説

最近、食品や飲料品と小説がコラボしている例をチラホラと見かけました。 ddnavi.com www.kinokuniya.co.jp 食べ物や飲み物を楽しむ、ちょっとした時間に、ちょっとした小説に触れて、ちょっといい気分になる。こういうしかけ、いいですね。 「読む」って、…

山本くん

だいぶ間が空いてしまいました。期末期初は毎年バタバタしてしまいます。年度末は諦めと反省?からもう少し楽なのですが、年度の途中は挽回の可能性も検討するので。。まぁ、どんなお仕事でも大変なのでしょうね。 という言い訳はさておき、本日はゆるゆると…

読書と可処分時間

読書家のみなさんは、どの程度読書に費やす時間をお持ちなのでしょうか。 私の場合、読書をテーマにしたブログを書いているくせに、なかなか時間が取れず、通勤電車等の移動中、あるいは寝る前など、細々と時間を捻出しています。そんな中、ふと、人生であと…

読書術本の読書術を解析する(2)

前回の続きです。読書術本のAmazonレビューデータを使って、テキスト解析してみた、というお話です(対象データセットや解析手法については、こちら)。 解析結果と考察 以下、各解析結果について、考察してみようと思います。 (1)語の関係性 共起ネットワ…

読書術本の読書術を解析する(1)

2015年も残すところ3か月を切っておりますが、とある書店でブルータスの読書特集を見つけました。 ▼マガジンハウス著「BRUTUS (ブルータス) 2015年 1/15号 [雑誌]」(マガジンハウス) 著名人による読書の楽しみ方、書店員による2015年の課題図書など盛りだ…

書評『本を読むときに何が起きているのか』

今のところ、今年一番の面白い本に巡り合った気持ちでいます。 本を読むとき、我々に何が起きているのか。通常、計り知ることが非常に困難な読書時の内的な状況について、図と引用と考え方を交えてヒントを提示してくれる本です。そうなんです。この本はヒン…

Drinkable book

こんな面白いコンセプトの本があったなんて。。知りませんでした。 www.youtube.com 世界の水問題を解決する「飲める本」(動画あり) « WIRED.jpwired.jp 途上国の水問題は「本を飲んで」解決しそうだwww.gizmodo.jp 銀ナノ粒子が練りこまれた、ろ過機能を…

書評『乱読のセレンディピティ』

『思考の整理学』でおなじみ、外山滋比古さんの著作です。2014年出版で、当時外山さんは91歳。なかなか本を書ける年齢じゃないと思います。すごい。 本書の趣旨は、自分の読みなれた分野に閉じこもらず、様々なジャンルを「風のように」積極的に乱読すること…

読書通帳

最近、読書通帳という言葉を知りました。 CA1841 - 読書通帳の静かなブーム / 和知 剛 | カレントアウェアネス・ポータル 上記文献によれば、読書通帳とは「(図書館の)利用者自身による、貸出記録の管理と活用を図るためのツール」で、最近静かなブームな…

美しい図書館建築

先日、図書館で『世界の美しい図書館』という本を借りて眺めていました。世界には本当に美しい造形を持つ図書館があるのだな、と。こんな素敵な図書館で読書したら、さぞ気持ちいいんだろうなぁ、と。 ▼アフロ,アマナイメージズ著「世界の美しい図書館」(パ…

書評『読書の今昔』

物理学者・寺田寅彦のエッセイです。 読書の今昔というタイトルのエッセイですが、昭和7年(1932年)に書かれたものですので、今から見ると、80年以上前…。読書の昔・大昔ですね。ただ、彼がこのエッセイで言いたかったことがとてもしっくりきたので、まとめ…

書評『読書力』

「読書の本質」を説いた一冊です。 著者は『声に出して読みたい日本語』『三色ボールペンで読む日本語』などでも有名な齋藤孝先生です。ここでも以前、子ども向けの読書術に関する本を紹介していますが、それより格段に熱い先生の思いが詰まった本でした。 …

紙とディスプレイ -表示媒体の違いにおける読みやすさ(1)

昨年、「紙媒体のほうがディスプレイより理解できる」とする実験結果が発表されました。 <a href="http://www.toppan-f.co.jp/news/2013/0723.html" data-mce-href="http://www.toppan-f.co.jp/news/2013/0723.html">「紙媒体の方がディスプレ…

読みやすさの評価指標(3)

前々回は英語での読みやすさ指標、前回は日本語での読みやすさ指標の先駆的研究について述べました。今回は、日本語の読みやすさ指標について、最近の動向について触れてみたいと思います。 こんな面白いツールが公開されています。 図1.日本語テキストの難…

読書チャンネルの快進撃を考える

ニュースリーダーアプリのSmartNewsに「読書チャンネル」が開設されて約2か月。参加者数の大幅増加という快進撃を続けているようです。 SmartNewsの仕組みは大雑把に言って以下のようなものだそうです。 図.参考:SmartNewsのニュース選定のアルゴリズムっ…

6/18放送のアメトーーク「読書芸人」第2弾

6/18放送のアメトーーク「読書芸人」第2弾、やっと見ました。詳細は様々な方がまとめられていますので、そちらに譲ります。もう旬を逃した感がありますし。。 <a href="http://fiblio.hatenablog.com/entry/ametalk.dokusyogeinin" data-mce-href="http://fiblio.hatenablog.com/entry/ametalk.dokusyogeinin">6月18日放送のアメトーク『読書芸人』 第2弾で取り上げられた本をまとめてみた - 積読書店員のつ</a>…

Kindleの新フォント「Bookerly」の読みやすさ?

Kindleネタが続きますね。実際に読まれたページ数で著者に支払いをするというネタで盛り上がっているKindleですが、6/30発売予定の新端末は、フォントとレンダリングエンジンが一新するそうです。 <a href="http://japanese.engadget.com/2015/06/21/kindle-dp/" data-mce-href="http://japanese.engadget.com/2015/06/21/kindle-dp/">アマゾン、Kindle DP著者に「実際に読まれたページ数」印税</a>…

Kindleの読書環境設計(3)

前回、前々回の続きです。Kindleの読書環境最適化について機能面から詳説し、考察します。 (4)ハイライト これはいわゆる下線を引く機能です。当該の本を読んでいる最中にも参照できますが、おススメは「your highlight」というWeb上で下線箇所を確認でき…

Kindleの読書環境設計(2)

前回は、Kindleの読書環境最適化について、いくつかの機能をピックアップしてその効果と改善ポイントを表にまとめてみました。今回はその詳説編です。 表1. Kindleの機能と効果 機能効果改善ポイント (1)ページめくり 読書没入感の演出 新しいUIの導入 (2)ブ…

Kindleの読書環境設計(1)

Amazon Kindleには、読書環境を最適化するためのたくさんの機能が備わっています。今回は、実際に何冊かの本を読みながら、いくつかの機能の効果と改善ポイント(検討の余地がある要件)について考えてみたいと思います。 対象にした本は以下の3冊です。 ▼西…