読書的な何か。

読書と読書にまつわるテクノロジー、雑記など。

聴く読書

聴く読書とは?

いわゆる朗読のことです。

昔、NHKで名作の朗読番組ってありましたのよね?人生の愛読書となった『君たちはどう生きるか』、初めて読んだ(いや聞いた?)のは、朗読ラジオでした。当時はなんていう番組だったのかな。これの前身かな。。

www.nhk.or.jp

さて、時は流れ、現代。朗読コンテンツはオーディオブックと呼ばれ、スマホや携帯型音楽端末を介して楽しめるようになりました。オーディオブックとは、要するに、書籍に書かれていることが読み上げられた音声ファイル(ないしその再生ソフトウェア)のこと、と言っていいと思います。

マーケット

聞きなれないオーディオブック、世界的にはそれなりに市場があるようです。「電子書籍の次の柱に――大手出版社など16社、「日本オーディオブック協議会」設立 - ITmedia eBook USER」によれば、

国内のオーディオブック市場は現在、パッケージ(CD-ROMなどの形で提供されるもの)が約30億円、ダウンロードなど配信型のものが約20億円で、合計すると約50億円の市場といったところだという。

米国では1600億円規模

また、「Global Audiobook Trends and Statistics for 2016」では、

The global audiobook industry is currently evaluated at 2.8 billion dollars and this is primarily due to the sheer amount of new titles that were produced in 2015.

これらの記事からわかることは、2015年の世界市場は約2800億円、うち米国が1600億円、日本は50億円の規模です。

日本がどこまで市場規模を拡大できるかは未知数ですが、朗読は書籍と比べて制作コストがかかります。読み上げにはある程度ディレクション(コンテンツの方向付け)が必要ですし、読み上げそのものにもお金がかかります。ということは、高精度な文章解析器と、流暢な自動読み上げ機能ができれば、ある程度コストを抑えられて、ブレイクしそうな気もします。

国内のオーディオブックの状況

様々なサービスがあると思いますが、ざっとググってよく見かけたものを抜粋でまとめてみました。国内のみです。海外は、、、力尽きてやってません^^

表1.国内オーディオブックの状況
提供サービス名取り扱い作品数課金
オトバンク FeBe 約1万5000点 個別販売/月額制
Amazon Audible 約9000点 月額1500円
アールアールジェイ kikubon(キクボン) 約150点 個別販売
トゥ・ディファクト honto 約250点 個別販売
パピルス 電子書店パピルス 約750点 個別販売

 毎年8万点以上の新刊が発行される出版市場においては、大手オトバンクでも作品点数は累積で約1万5000点なので、規模はかなり小さいと思います。でも、先に述べた技術課題がクリアされると、未知数の伸びしろがあるかもしれない。何はともあれ、コンテンツがないと勝負もできないのですから。

利用シーン

コンテンツと同じくらい重要だと思うのが、利用シーンです。人間、なかなか未知のものにはチャレンジしないものです。自分にどれくらい負荷がかかるのか、測れないし、仮に測れても、現状と比較しちゃいますから。

それを打破するだけの利用シーンのイメージはあるか!?

残念ながら、ごくごく平凡なものしか思いつきませんでした。オーディオブックを真剣にやろうとしてる人たちなら、おそらく一度は議論した内容なんだろうなぁ。

  • ○○しながら/料理しながら、乗り物に乗りながら、街を歩きながら・・・等々
  • アクセシビリティ/目の不自由な方向け
  • ビジネスマン向け/オトバンク調べによれば、30~40台に人気だそう。だとすると、自己啓発とか語学とか、あえてコンテンツをしぼったり。。

この3か月、AmazonのAudibleを試していたのですが、やはり決定打の利用シーンは思いつきませんでした。まぁ、もっと気軽に楽しむ位置付けなのかもしれません。

機能

コンテンツや利用シーンと比べれば、決め手にはなりにくいかもしれませんが、ならではの機能もあるかと思います。

  • 手ぶらでOK
  • 音声以外にも、音楽がついていて楽しい
  • 倍速、○○倍速→早く聞ける
  • 「下線を引く」に該当する機能がない

なにも文字の書籍と対比させることはないかもしれませんが、(紙でも電子でも)付箋を貼ったり、下線を引いたりしながら読んでいる身としては、流れる音声の一部分、さっと聞き直したり、線を引くようなアクションができるとうれしいなぁと思います。

まとめ

現状、いくつかの技術課題をクリアにすると、もしかすると新しいマーケットが見えてくるかもしれない、と言ったところでしょうか。

純粋に、聴く読書って響きが面白いし、広がってくれるといいんだけどなぁ。doksyo-tek的に、活用できているとは言い難い状況ではありますが。

「聞く」ではなく「聴く」がポイントかもしれません。NHKによれば、後者には注意深く身を入れて耳を傾けるという意味が含まれているそうです。

www.nhk.or.jp

読書は能動的に働きかけるものであるとすると、聴く読書も同じロジックで身を入れて接する必要があるのかもしれません。そういう聴き方に慣れてくると、なんとなく聞いてしまっていたオーディオブックも、また違った味わいが出てくるのかもしれません。