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「読むこと」とテクノロジーの関係を整理する

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今回は、次の記事をきっかけとして「書くこと」の対にある「読むこと」に関するテクノロジーの関係を整理してみたいと思います。

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記事では、「道具とそれを使った思考」という観点から「書くこと」について論じています。

道具という点では、次のような入力形態に言及しています。

ここでのキーはデータ化できること。PCやスマホを使った入力はもちろんのこと、紙+手書きもカメラ撮影で画像化したり、OCRにかけてテキスト化することでデータ化が可能です。

そして、音声入力。この形態が進化すると、これからはデータ化に加えて「論理的な長文作成のノウハウ」を得ることが大事になると説いています。確かに話し言葉と書き言葉はだいぶ異なるので、話し言葉がテキスト化されてもそのままでは使いにくく、書き言葉(=文章)として成立するための論理的な作成ノウハウは重要視されそうです。

余談ですが、かつてとある文字起こしをしたことがありますが、話者の言葉をただテキスト化するだけではまったくダメで、それを意味のある構成に作り変えることに大いに労力を使ったことを思い出しました。

さて、この話題を「書くこと」から「読むこと」に置き換えてみるとどうでしょうか。

「書くこと」の対が「読むこと」であるならば、まず、書くこと=入力、だとすると、読むこと=出力と捉えることができるかと思います。ただ、これは実は入出力の中心がコンピュータである場合の話です。例えばキーボードやマイクから情報が入力されると、コンピュータで処理され、ディスプレイやスピーカーに出力される、というわけです。

では入出力の中心を人間にしてみたらどうでしょうか。入出力の関係は逆転し、書くこと=出力、読むこと=入力となります。例えば、文字図形が目を通して入力されると、脳内で知識として処理・蓄積され、書くときに道具と思考を使って、出力されるわけです。

つまり、「読むこと」にはコンピュータの側面から見た出力のテクノロジーと、人間の側面から見た入力のテクノロジーがある、と考えられそうです。

今回は個々のテクノロジーについてはあまり詳細に言及しませんが、それぞれ、次のようなテクノロジーの視点があるかと思っています。

出力のテクノロジー

入力のテクノロジー

  • 構造化文書処理
  • 文章理解
  • わかりやすさの定量
  • 記憶・概念の組み合わせなど脳科学の知見

こうして並べてみると、出力系に比べて、入力系には多くの課題がありそうです。例えば構造化文書ひとつをとってみても、文書を構造的に記述できる言語は多々研究開発されてきていますが、ではそれをどう構築していくのか、人によって受け取り方が異なる「文章の理解」や「わかりやすさ」にどういったアプローチで指標を作っていくべきか、かなりの研究の余地が残されていると感じています。

今回は、読むことを取り巻くテクノロジーについて、簡単に俯瞰してみました。今後は入出力それぞれのリストの精緻化、個々の研究課題の明確化などを行い、読むことのテクノロジー、すなわち読書工学のグランドデザインを考えてみたいと思っています。