読書的な何か。

読書と読書にまつわるテクノロジー、雑記など。

『戦略読書』定点観測 - 2016年11月

はじめに

戦略読書・11月の定点観測です。

図1は、読書ポートフォリオ・マトリクス(PRM)を整理したものです。

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図1.読書ポートフォリオ・マトリクス(RPM

定点観測(2016/11)

上記RPMに基づいて実施した11月の定点観測結果です。

ビジネス基礎

なし

 

ビジネス応用

リモートチームでリモートワーク。まだまだ浸透するには時間が必要だし、評価手法も考慮が必要だと思う。でも、これからの、それこそダイバーシティな社会はこんな働き方も許容できる制度設計が求められるんだろうな。未来の働き方を考えるのに向いている一冊です。

 

非ビジネス基礎

山と食欲と私 1 (BUNCH COMICS)

山と食欲と私 1 (BUNCH COMICS)

 

たまたま立ち読みしたヤマケイ(山と渓谷社)の雑誌に紹介されていたマンガ。これは大正解。もうタイトルそのまま。読むと、山に登りたくなり、そしてお腹がすきます。3巻まで出ていたので、買いそろえてしまった。

 

電波の城(1) (ビッグコミックス)
 
電波の城(2) (ビッグコミックス)
 
電波の城(3) (ビッグコミックス)
 
電波の城(4) (ビッグコミックス)
 
電波の城(5) (ビッグコミックス)
 
電波の城(6) (ビッグコミックス)
 
電波の城(7) (ビッグコミックス)
 

派手な世界の裏側には、ドロドロとした、様々な人間の思惑が潜んでいそうに見えるが、それを具現化したような作品。やや破天荒で非現実的なヒロインが、ぐいぐいテレビの世界に引き込んでくれる。テレビの裏側とは、果たしてこういう世界なのだろうか。中の人の評価も調べてみたいところ。

 

ふたりはともだち (ミセスこどもの本)

ふたりはともだち (ミセスこどもの本)

 

 かえるくんと、がまくんの、フレンドリーな小話が5つ。装丁も、サイズも、紙も、絵も、フォントも、そういったものすべてが気に入っている。実は5つの小話はつながっていて、前のお話に出てきたジャケットを着ているとか、小さな発見もうれしい一冊。個人的には『おてがみ』が好きかな、やっぱり。

 

100万回生きたねこ (講談社の創作絵本)

100万回生きたねこ (講談社の創作絵本)

 

これまでも何度か読んだことがあったけど、再読。主人公のねこが、白ねこに告白して、それから心を通わせていくさまが好き。そして、死とは何を意味するのか、改めて考えさせられる。

 

非ビジネス新規

半径3メートルのカオス

半径3メートルのカオス

 

本屋でまとめ買いをする時に、勢いで買ってしまった本。爆笑というより、クスッとする感じのネタがおもしろい。台湾旅行編などは読みごたえあり。割とツボでした。

 

読書介助犬オリビア (講談社青い鳥文庫)

読書介助犬オリビア (講談社青い鳥文庫)

 

犬に本を読み聞かせをすることで、本に興味を持ってもらおうという、おもしろい取り組みを紹介した本。書評を書いたので、興味がある方はそちらもご参照ください。

 

分析

以下は、11月のRPM分布と、累積(1~11月)のRPM分布です。

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図2.11月のRPM分布

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図3.累積のRPM分布

今のところ、以下のような実績と予測になっています。

実績

 冊数時間
11月 13冊 20.5時間
1~11月 163冊 328時間

予測

 年間冊数※1総読書時間※2
予測値 177.8冊
(月平均14.8冊)
357.8時間
(月平均29.8時間)

※1 163冊÷11ヶ月≒月平均14.8冊、14.8冊×12ヶ月≒年間冊数177.8冊
※2 328時間÷163冊≒1冊あたり2時間、2時間×177.8冊≒357.8時間

あと1ヶ月を残して、100冊・400時間の年間目標値に対して、冊数は163%、時間は89.95%の達成率となっています(冊数の多さのわりに、時間が比例していないのは、主にマンガが多く影響しているものと思われます)。

11月は、あまり多く読書時間を取れなかったという印象です。それは値にも表れていますが、ただ、読んでいる最中のものがそれなりにあり、それらが11月内で読み終わらなかったということもあります。読書なんで、当然、月単位で読み終わるという制約はおかしいですので(となると、ここで示している統計も月単位でやるのはおかしいのですが、それはまぁ実験ということで)、自由に読み進めております!

最近、小説がいいんだよなぁ。これまでも読んでましたが、たまに読めればよかった。ところが最近は次々と小説を読みたくなります。これは何かの予兆でしょうか。それとも、何かの変化の結果なのでしょうか。

さて。いよいよ次回で戦略読書も1年になります。データ的にも、気持ち的にも、どんな1年だったか、振り返りをして、リニューアルしてシーズン2(やる気満々)を迎えるつもりです。

参考

書評『読書介助犬オリビア』

はじめに

アニマルセラピーでは、「犬は病気の人の苦痛を和らげるのに役立つ」と考えるそうです。それをヒントに、本を読まない子が犬に本を読んであげることで、読書の楽しみに気づいてもらうという活動があります。

それが、読書介助犬を利用したR.E.A.D.(Reading Education Assistance Dog)プログラムです。この本では、看護師のサンディと読書介助犬リビアの交流を通じて、R.E.A.D.プログラムができる過程が描かれています。

読書介助犬オリビア (講談社青い鳥文庫)

読書介助犬オリビア (講談社青い鳥文庫)

 

犬とセラピー

読書介助犬という存在を知らなかったのですが、R.E.A.D.の読書介助犬として活躍するためには、以下の2項目をクリアする必要があるそうです。

  1. デルタ協会のペットパートナーズテストの21項目に合格する
  2. R.E.A.D.の読書介助犬として、必要な要素(温厚、静かな環境でも緊張しない、等)を評価する

以下、参考サイトです。

knots.or.jp

japdt.com

また、読書介助犬の、より詳細な役割や効果については、以下の論文にまとめられていました(読めていませんが、面白そう! pdfです)。

leRoux, Marieanna C., Leslie Swartz and Estelle Swart, "The Effect of an Animal-Assisted Reading Program on the Reading Rate, Accuracy and Comprehension of Grade 3 Students: A Randomized Control Study", in Child Youth Care Forum, 43L655-673(2014).

所感&気になったフレーズ

R.E.A.D.プログラムができあがる過程で、犬を媒介として、子どもたちと本がどのように対峙して、そしてどのようにつながっていくのか。いくつかの気になるフレーズとともに語られていました。

当時のプロジェクトのダイナミズムと言いますか、サンディたちの息遣いが伝わる、とてもよい本だと思いました。大人も、読むとよいよ。

以下、お気に入りフレーズ4選。本当は3選にしたかったのですが、絞れませんでした~。

p50
いまの子どもたちはほとんど本を読まない。本を読むのをいやがる子も多いと聞く。でも、犬と一緒ならどう? ひとりで読まなくても、かわいい犬と一緒なら、読書の楽しさを感じることができるんじゃない?

p107
自分の年齢よりレベルが低い本を読むことは、屈辱的なことではない。大人だって絵本も読むし、児童書も読む。なにもむずかしい本を読むことだけが読書ではない。まずは、本の世界に入り込める想像力を身につけることが、読書好きになる最大のポイントだ。

p146
子どもはいつも、親や教師、大人たちから命令されてばかりいるもの。犬は、人間の言葉や気持ちにとても素直に答えてくれるわ。その犬に接することで、子どもたちの中に"小さな名誉"が生まれるんじゃないかしら。だれかが、無条件で自分に寄りそってくれるなんて、大人だって感激するじゃない。

p169
ぼくたちはいつもだれかに愛されること、なにかをしてもらうことばかり望んでいるけど、本当に大切なのは、自分がだれかを愛しいと思えること、そしてだれかのためになにかしたい、と願う気持ちなんだ。

 

青空文庫をKindleで読む

はじめに

今更感が満載ですが、青空文庫の本をKindleで読もうとすると、いつも手順を忘れてググったりしてるので、まとめておこうと思います。年末進行で忙しい時の、現実逃避ってやつです。

1.タイトルを選ぶ

青空文庫から好きな本を選びます。

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図1 青空文庫

2. ファイルをダウンロード

テキストファイル(ルビあり)のzipファイルをローカルにダウンロードします。

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図2 テキストファイル(ルビあり)は下側にある

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図3 テキストファイル(ルビあり)の中身

3. ダウンロードしたファイルを結合する(オプション)

このセクションは、2でダウンロードしたファイルを複数つないで1つのファイルとして扱う場合の話になります。束ねないのであればスキップしてかまいません。

ファイルは、メモ帳等のテキストエディタでコピペして1ファイルに足しこんでいきます。ただ、ファイルを結合すると、Kindleで頭出しがしにくくなるので、目次情報を付け加えておきます。

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図4 ファイル整形。3行目で表紙画像、4行目で目次見出しを入れている

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図5 完成すると、こんな感じで目次が見れます

4. AozoraEpub3でmobi形式に変換

ツールを使って、Kindle用のファイルを作ります。用いるツールは、AozoraEpub3という、青空文庫の注記入りテキストをEPUBという電子書籍用フォーマットに変換するツールです。利用にはJavaが必要ですので、配布サイトのインストールマニュアルをよく確認する必要があります。

www18.atwiki.jp

かなり様々な設定ができるのですが、自分が最低限しているのは、

  • 表紙画像を指定する
  • 拡張子は「.mobi」で出力する
  • 入力文字コードは「MS932」
  • 書字方向は「縦書き」
  • 出力先は「パソコン内の任意の場所」

くらいです。

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図6 AozoraEpub3の設定と変換処理

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図7 変換完了!

5. 生成したmobiファイルをKindleに送る

生成したmobiファイルは、KindleとPCをつないで転送することもできますが、メールでKindleに送ることができます。doksyo-tekの場合、転送用にGmailを使っているため、25MBまでならメール転送してしまっています。

ちなみに、Amazonサイトで、アカウントサービス>コンテンツと端末の管理>端末(タブ)と進むと、Kindle転送用(Send-to-Kindle)のアドレスを確認することができます。

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図8 Send-to-Kindle

6. 確認する

Kindle本体(今回はAndroid端末のKindleアプリ)を開くと既に送られたmobiファイル(アイテム)が存在します。もし、ない場合は、同期させると、新しいアイテムを探してくれます。

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図9 同期したらアイテムが出てきた

7. 読む!

指定した通り、きちんと読むことができました。

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図10 ルビもしっかり振られています!

以上です。

まとめ

2016年は江戸川乱歩谷崎潤一郎等、著名な作家が没後50年を迎え、多数の作品が公開されています。たまには青空文庫を眺めて、そして、ここで示したくらいの手間をかけて、デジタルで名作を楽しむのもアリなのではないでしょうか。

The BookTech Award 2016

はじめに

イギリスの老舗・THE BOOKSELLERによるFUTURE BOOK CONFERENCE 2016。出版関連のスタートアップにThe BookTech Awardを行っていますが、つい先ごろの12/2(金)に受賞者が発表になりました。

www.thebookseller.com

受賞は・・・だーん!

書籍関連メタデータ最適化サービスのKadaxisと、リアルなロケーションでの物語体験を演出するStoryTouristがダブル受賞したようです!

The BookTech award was one by Kadaxis, which uses data science to improve book discovery across the publishing value chain, and Story Tourist,  "a kind of Pokémon Go for stories" - an app that allows readers to experience books at the very locations where the action takes place.

The final five

まずは振り返りということで、エントリーしていた5組をご紹介。

www.thebookseller.com

 Joosr

ノンフィクション本を、20分以内で読めるよう要約するサービス。日本でいうところの、flierやBOOK-SMARTのようなサービス。

www.youtube.com

Kadaxis

メタデータ最適化システムの提供。

メタデータとは、書籍購買に関するデータのこと。著者から見れば、読者のマーケティングデータになる。読者から見れば、購入する書籍データになる。そして、出版社から見れば、著者・読者双方に提供するデータ(書籍データ+マーケティングデータ)になる。Kadaxisは、各プレイヤーにそれぞれ以下のサービスを提供。

  • 著者:AuthorCheckpoint(マーケティングデータ提供サービス)
  • 出版社:metadata optimisation and data APIs(書籍データ作成サービス)
  • 読者:BookDiscovery(書籍検索サービス)

なお、中心となる書籍メタデータは可変なBISACカテゴリ+キーワードによって最適化されている。

Novel Effect

子ども向けの印刷本を声に出して読むと、リアルタイムに音声認識し、音声効果を付与してくれるサービス。

www.youtube.com

publishizer

著者と出版社のマッチングサービス。

以下の1~3のステップを実施することで著者と出版社をマッチングしていく、クラウドパブリッシング方式。

  1. 著者は1000語程度のブックプロポーザルを提出する
  2. publishizerは45日間のプレオーダーキャンペーンを実施する
  3. 興味のある出版社から直接著者に返事がある

プロポーザルのテンプレートはpublishizerが提供し、プレオーダーが500件以上だと大手出版社にコンタクトできる。まあ、著者は各種オファーから最も良いものを選べばよい。

vimeo.com

Story Tourist

ポケモンGoみたいに、特定の場所でカメラをかざしながら動き回ると、本に関連するARオブジェクトが見つかり、オブジェクトにアクセスすることで読み物を読むことができるという仕組み。

www.youtube.com

まとめ

どのアイデアもいい味出しています。エントリを眺めてみると、大きく現実的にデータ連携するビジネスモデルと、書籍コンテンツそのものに付加価値を付けるビジネスモデルに分類できるのかなと思いました。それぞれのカテゴリから1つずつ選ばれてるし。勝手な推測ですが。

また、このような取り組みは、日本で言うならば、JEPAが執り行う電子出版アワードが、まさに該当するのだと思います。出版には言葉の壁が付いて回りますが、このグローバル時代、どうせなら、世界規模で様々なBook Technologyを捉えてみると、思いもよらなかった気づきがあるかもしれません。ワクワク。

本の未来をつくる仕事/仕事の未来をつくる本

本の未来をつくる仕事/仕事の未来をつくる本

 

 

映画『ザ・ウォーカー』

本が出てくる映画について、いろいろ思ったことを書こうという趣旨です。

ザ・ウォーカーは2010年の米映画。主人公はデンゼル・ワシントン。個人的には『ペリカン文書』のイメージが強いですが、『トレーニングデイ』でアカデミー主演男優賞を受賞しているそうです。

www.youtube.com

どんなお話かというと、以下、Wikipediaのあらすじの転載ですが、

最終戦争によって国家も文明も滅びた世界を旅する男(ウォーカー)イーライがいた。彼は、30年間もアメリカを西に歩き続けている。目的地は何処なのか、彼にもわからない。ただ、「本を西へ運べ」という心の声に導かれるままに歩き続ける。

一方、とある本を探し続ける独裁者の男カーネギーがいた。彼は、旧来の秩序さえもが滅びたことを良いことに理想の町を作ろうと企てていた。

そして、イーライはカーネギーが仕切る町に立ち寄る。カーネギーは探していた本をイーライが持っていることに気づき奪おうと企てる。

 といった感じです。

最後の一冊となった本の内容は何か。ウォーカー(黒人)⇔独裁者(白人)。この対比は何を意味するのか。イーライが行き着く「西」で、本はどうなるのか・・・等々、見どころが多い作品です。

文明の礎=本、という構図はうまいなと思いました。人々が信じる力と、そんな人々に複製して届けられる技術。これらが、退廃した新世界でふたたび生み出される過程を描いた、とでもいう感じでしょうか。

「あれは本じゃない。兵器だ。」って言葉が印象的な映画でした。

以下、通な方々の映画批評です。

movie.maeda-y.com

ameblo.jp

 本も出ていたみたいです。

ザ・ウォーカー (角川文庫)

ザ・ウォーカー (角川文庫)