チャットボットによる本の紹介
はじめに
今年の2月くらいに、米国ハーパーコリンズ社がチャットボットによる本の紹介(Book Recommendation)を展開する、というアナウンスがありました。
具体的には、Facebook Messengerを用いたユーザ対話を通じ、書籍の推薦が行われます。要はチャットで会話をしながら、ユーザの趣味嗜好を絞り込み、適している本をおススメしてくれる、というわけです。この試み、発表から3か月も経ったので、そろそろこなれてきたかしらと、試してみました。
本のオススメチャットボット試行
まずはFacebookのMessengerでHarperCollinsを探すと、すぐ見つかりました。
図1 FacebookのHarperCollinsさん発見
とりあえず「スタート」で開始します。
図2 13万人もいいねしてるのか
始めると、吹き出し対話ができる画面に遷移します。HarperCollinsさんから、本のおススメ(RECOMMEND A BOOK)か著者のオススメ(AUTHOR TOP PICKS)を促されます。
図3 どっちにする?
本のおススメ(RECOMMEND A BOOK)にしてみると、最近読んでよかった本を聞かれました(この返信をフックに、推薦してくるのですね)。
図4 おススメしてくれるかなぁ
適当に「Star wars」とか入れてみたところ、ヒットせず。。[Title] by [Author]の書式で入れてみてね、と指示されました。ので、例示の通りにしてみたら、、、
図5 Whoops!からOh, no!へ
うーん。まだ入力起因の推薦機能はあまりマッチングデータが充実していないのかもしれません(Facebook Messengerはルールベース??)。仕方ないので、「Author TOP PICKS」を選択したら、著者を数名おススメされました。
図6 著者がカードのように並びます(左右にスワイプ可)
選んだ著者の「〇〇's Top Picks」を選択すると、今度は当該著者の本がおススメされました。
図7 本もカードのように並びます(もちろん左右にスワイプ可)
さらに本の「SHOW BOOK DETAILS」のリンク先では書籍情報や書籍の評価情報等を得ることができるようになっています。もちろん、「Get a copy」リンクもあり購入サイトや図書館サイトへの導線もあります(Goodreadsの機能か)。
図8 書評でおなじみ「Goodreads」のページだ!
まとめ
まだはじまって数か月。チャットボットを使って本のオススメするという切り口は面白いけど、いかんせん対話のためのルールデータが充実していないようで、まだまだインタラクティブにレコメンドするという状況ではないようです。
ただ、これは検索という行為を大きく塗り替える最初の一歩のような気がしています。
情報を探すという意味では、検索エンジンにキーワードを入れるのも、対話エンジンにキーワードを聞くのも、あまり変わりません。しかしながら、検索結果の取り扱いとなると、この2者はまったく異なります。つまり、前者(検索エンジン)はユーザ自身がフィルタリングしていって結果を得る必要がありますが、後者(対話エンジン)は対話を通じて、自然に結果が絞り込まれていくのです。
日常生活の中で、検索をするという行為は結構な負担になります。対話のような、より自然な行為を通じて本をおススメしてくれたり、求める情報を得ることができる。それはとても便利なことだと思います。そして、チャットボットがそんなサポートをしてくれる時代は、そう遠くないと思うのです。
図9 まだ日本語は通っていない。ハーパーコリンズって日本ブランチあるのに!
参考
人工知能の文脈でチャットボットを知ることができる本をご紹介。
夢みるプログラム ~人工無脳・チャットボットで考察する会話と心のアルゴリズム~
- 作者: 加藤真一
- 出版社/メーカー: ラトルズ
- 発売日: 2016/08/25
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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読書的ニュース2017-05
Twitter(@doksyo_tek)につぶやいた#読書的ニュース、2017年5月分です。
モーメントは自分の切り口でツイートを編集できるので良い機能だと思います。今はハッシュタグと時間だけで分けてますが、内容や視点などを軸としたモーメントを作ってみるのも面白いかも。
『戦略読書』定点観測 - 2017年3月
はじめに
下記は、今年の読書ポートフォリオ・マトリクス(以下、RPM)です。昨年の実績値を参考に、年間200冊・読書時間460時間、マトリクスは横軸が「鍛錬⇔趣味」、縦軸が「基礎⇔応用」にアップデートしました。
図1 2017年版のRPM
定点観測
趣味-基礎
のび太の結婚前夜/おばあちゃんの思い出新装完全版―映画ドラえもん (てんとう虫コミックスアニメ版 映画ドラえもん Vol.)
- 作者: 藤子不二雄F
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2004/11/25
- メディア: コミック
- 購入: 5人 クリック: 32回
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何度でも泣ける名作2本セット。本編はアニメセルだが、「原作とアニメの違い解説」も付いており、読んでいて楽しい。
趣味-応用
電子書籍の未来については特に気になった部分だったので、別途書評記事を書きました。詳細はそちらもごらんください。業界関係の人が見ても、そこそこ的確な感じ。ただ、その分予測できそうな未来が語られており、目の覚めるような未来は語られていなかったのが残念。まぁ、論理的な経営者は夢物語よりも現実的な未来を語るほうが正しいよね。
鍛錬-基礎
なし
鍛錬-応用
BRUTUS(ブルータス) 2017年 1/1・1/15合併号[危険な読書]
- 出版社/メーカー: マガジンハウス
- 発売日: 2016/12/15
- メディア: 雑誌
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「危険な」切り口はたくさんある。荒唐無稽、特殊、狂気、異常、思想、、等々。ここに取り上げられている本は、どっぷり浸かってはいけないと思いつつも魅力的で、引き寄せられる力を持っている。あぁ、読みたい。どんな本かは、本編でお確かめ下さい。
BRUTUSの「危険な読書」特集にも通じる本。こちらは、専門書・芸能本・ノンフィクション・趣味本等、本のジャンル別に変わり種を収録。危険ではないが、興味本位でのぞき見したくなる。
分析
以下は今月のRPMです。棒グラフが冊数、折れ線グラフが読んだ時間です。
3月はTwitter等、他メディアに確実に時間を吸い取られました。本読みたいなぁと思いつつも、ついついSNSに時間を奪われる。そんな月でした。
読書形態(紙、図書館、スマホ、専用端末)ですが、3月は紙のみ。図書館の本も、借りたけど読まずに返していました。
従いまして、あまり分析要素がありません。月4冊って定点観測始まって以来の低水準かもしれません。。材料がないと、分析もやりずらいなぁ。
続いて、累積のRPMです。
3月の読書傾向が微妙だったこともあり、累積のグラフが三角屋根の形をしていることに変わりはありませんでした。
ちなみに、学習要素が高い両端の「鍛錬‐基礎」と「趣味‐応用」、2月までは0冊でしたが、3月は親書を1冊読んだので、かろうじて変化が見てとれます。
次に読む本
戦略読書のキモは、他人と差別化するために、他人と違う本を戦略的に読みこなしていくことであるとし、組み合わせて自分が選ばない本を選んでみるという作戦を考えました。下図はその手法を図示したものです。
この仕組みに則り、2月に選んだのは、以下の本でした。
- 作者: 宮下洋一
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2015/06/05
- メディア: Kindle版
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そして、3月の読書状況を見てお分かりの通り、まだこの本、読めておりません。次に読む候補としてストックしておき、図書館や書店に赴いた際には、積極的に手に取ってみようと思っています。
さて、3月はイマイチでしたが、4月挽回なるか。最近さぼっていた定点観測のまとめ、どんどん出していこうと思います!
参考
読書的ニュース2017-04
4月から、Twitter(@doksyo_tek)のモーメントにまとめることにしてみました。#読書的ニュースをつけて日々のニュースをつぶやき、月1回、こちらにもまとめを投稿します。まだまだ実験的ですが、しばらく試してみることにします!
ということで、まずは2017年4月分です。
書評『鈴木さんにも分かるネットの未来』
はじめに
本書はドワンゴ創業者でカドカワ社長の川上量生(かわかみのぶお)氏がネットの未来について論じた本です。
「鈴木さんにも分かる」とは、川上氏が弟子入りしていたスタジオジブリの鈴木敏夫氏に説明する(=ネットに詳しくない人に説明する)というスタンスを取っていることに由来します。
目次を眺めますと、ネット社会やネット世論から始まり、コンテンツ、プラットフォーム、電子出版、テレビ、集合知、ビットコイン等、多岐に渡ってネットトレンドが網羅されています。
この中で、やはりdoksyo-tekは「電子書籍の未来」が気になりました。そこで、今回は『鈴木さんにも分かるネットの未来』の「電子書籍の未来」について書評してみたいと思います(従いまして、本書全体の書評にはなっていません)。
本の未来
電子書籍というと、よく紙の本 VS デジタル本という構図で語られることが多いのですが、冒頭、川上氏はズバリ紙に未来はないと切り捨てています。
p211
結論から先にいうと、紙の本が電子書籍に置き換えられるのは避けられない未来だというのがぼくの見方です。
デバイスの携帯性、省スペース性、テキスト化による検索性、紙代・印刷代・物流代の削減によるコスト性。そのすべてにおいて、紙に勝っているため、というのが理由です。
こういう周辺が整いつつあることはわかります。では、肝心の本そのものはどうでしょうか。川上氏は未来の電子書籍は以下のように進化していくと見立てています。
p215
- テキストや画像だけでなく、音声や動画などのいろいろなデータを取り込んでマルチメディアの電子パッケージ媒体になっていく
- 自動的に内容が更新、追加されるようになる
- 検索、引用、メモ、読書記録の自動保存など、読書体験の進化
- 他人と読書体験を共有できるようになる(ソーシャルリーディング)
- 本の非局在化。自分の持っている本は、ネットワークにつながっていれば、どこでもさまざまなデバイスで読めるようになる
さほど新しくない分、十分実現できる、あるいは既に実現されている技術で構成されています。例えば、1。いわゆるマルチメディアは、EPUBがHTML5で構成されていることや、Kindle in Motionのような取り組みを通じてわかるところです。他にも、内容の追加・更新、メモや下線の共有はKindleその他で実現されていますし、ソーシャルリーディングサービス(本のStand、ブクログ、読書メーターなど)、いつでもどこでもデバイスに依存せずに読める環境等も整いつつあります。
これからの電子書籍に求められるもの
現在の電子書籍に足りないもの、そしてこれから求められてるものについて、彼はこのように語っています。
足りないもの
p219
電子書籍の大きな欠点は、読んでいるとき以外は、どこにあるか目に見えないということです。
求められるもの
p227-228
現在のウェブでの情報の爆発にともなう内容の低レベル化を考えると、無料ウェブで広がっているハイパーリンク網とは別に、有料の電子書籍間でのハイパーリンク網が、インターネットの新たな知のネットワークを構築する可能性があるんじゃないかと期待しているのです。ウェブの知のネットワークを電子書籍が担うようになれば、むしろ電子書籍はインターネットによって最も成功したコンテンツの地位を得られるのではないでしょうか。
「足りないもの」は同感です。
本を買ったものの読まずに積み上げておく行為を積読と呼びますが、積読は物理的に目の前に本が積みあがっているため、読んでいない本が圧迫感と共にそこに存在しています。
それに対し、電子書籍は、アプリケーション内部に本棚はあるものの、そのアプリを起動させなければ、一切目に触れることはありません。読みかけの本、または読んでいない本がありますよ、といったプッシュ通知もありません(と書いたけど、プッシュくらいならサービスでありそうだな)。
このあたり、読者に読まなきゃ!と思い出させつつ、かと言ってしつこくないように読書を促す、電子積読を解消する技術は今後の電子書籍発展に大いに役立つ技術だと思われます。
一方、「求められるもの」はどうでしょうか。有料・無料で差別化できる知識ネットワークが形成される世界。それは一つの解なのかもしれませんが、doksyo-tekはイマイチだと思っています。
有料であるとは、プロが編集しているため、内容の事実確認や言葉使いが担保されていることに対する対価なのだと思っています。であるならば、wikipediaに代表されるようなネットワーク上での相互編集・相互管理が昇華すれば、それはプロ編集者と同等の品質を保てるのではないかと思うのです(もちろんそこに編集者として参画するユーザへの対価は必要かもしれませんが)。
つまり、有料・無料による差別化ではなく、どれくらいたくさんのユーザの目でチェックされたかによる差別化です。「有料の電子書籍間でのハイパーリンク網」が価値のあるネットワークなのではなく、「多くのユーザに評価された電子書籍間でのハイパーリンク網」に価値があるのではないかと思うのです。
所感
今回は、カドカワ社長の川上氏によるネット論、とりわけ電子書籍論についてまとめました。紙が電子に置き換わりつつある状況の中で、堅実に機能強化をする一方で、電子積読の解消や、知識ネットワークの形成等、来るべき未来を示唆する、いい本でした。
オマケ
ネットを語るなら、とりあえずこの本も読んでおこう、と思うものを挙げてみます。
【全15巻合本版】角川インターネット講座<角川インターネット講座> (角川学芸出版全集)
- 作者: 村井純
- 出版社/メーカー: KADOKAWA / 角川学芸出版
- 発売日: 2015/11/25
- メディア: Kindle版
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