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読書的な何か。

読書と読書にまつわるテクノロジー、雑記など。

本を探すということ

先日、料理というキーワードで小説を横断する企画についてご紹介しました。

このキーワードによる横断、言い換えれば、本が持つ表現内容をリンクしていくことで生まれる新しい体験について、少し考えてみたいと思います。

図書館にはテーマで本を探す件名検索というしくみがあります。テーマのことを「主題」と言い、主題を簡潔に言い表すキーワードのことを「件名」と言うそうです。

例えば、『貧者の領域』という本があった場合、タイトル名・帯・著者プロフィール・目次などから、あらかじめ図書館員が件名を付与しておきます。そうすると、『貧者の領域』は、テーマ(具体的には「貧困」「社会的排除」といったキーワード)からも探すことができるというわけです。ちなみに、これらのキーワード、国会図書館の場合は「国立国会図書館件名標目表」(NDLSH)という予め決められたキーワード集から選ぶそうです。

参考

現状では、文学作品は対象外(キーワードの選択追加が難しいのかな)で、キーワードの付与は人手で行うために非効率、かつ付与のしかたにバラツキがある、といった欠点を持っています。

とは言うものの、国会図書館では丁寧にデータの拡充を図ってきています。NDLSHのデータセットをダウンロードして眺めてみると、2015年10月29日現在で約20000件のキーワードを誇っています。また、このデータはRDF/XML形式と呼ばれる、データ間の関係性を表現した形式でもダウンロード可能です。

下記の図は「読書」というキーワードが、他のキーワードとどんな関係でつながっているのかを示したRDF図になります(だいぶ小さくて見づらいと思いますが、ここではまずは情報が網の目状につながってる感じが伝われば)。

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たとえば、この図では「読書」は一番左側の緑色のノードに「http://id.ndl.go.jp/auth/ndlsh/00561668」という一意のURLが付くことで定義づけられます。このノードからたくさんの矢印が伸びており、各矢印には「SameAs(同じ)」とか「broader(広義)」、「narrower(狭義)」といった意味を表すラベルが付いています。そして、矢印の先はさらに別のノードが接続されています。

このように、RDF/XML形式では、キーワードとキーワードが意味を表すラベルでつながっているため、機械的に意味のあるキーワード関係を導出できるのです(例えば、「読書」の下位概念には「読み聞かせ」がある、といった関係)。

これはまさに、「料理」というキーワードで横断的に他の本が探し出されるための、基礎情報に他なりません。ヘミングウェイの鱒のソテーに関する記述から、スティーブン・キングの焚き火ハンバーガーに関する記述がつながってくる可能性もあるわけです。

この方式は突き詰めると「コンピュータは人間の話し言葉・書き言葉を理解できるのか」という問題に行きついてしまいそうですが、それはさておき、現状は少なくともこれまで図書館が培ってきたデータ作り/データの関係性作りは、本をリンクさせ、そこから新しい体験を生み出すための源泉となり得そうです。

近年は、ブックコーディネーターと呼ばれる職業の方も登場しています。

matome.naver.jp

彼らが行っている仕事は、本と人の出会いの場づくり。場が持つ意味や文脈に応じて、目利きした本を適切に紹介することで、人は本と豊かな出会いを体験することができるようになります。件名検索の裏側にある、RDFによる関係性記述だけでは、プロのコーディネートには到底およびません。でも、件名検索の拡張は、ブックコーディネートを支援するような形で、プロも見落とす文脈やアイデアを想起させる情報提示の可能性を秘めている気がしてならないのです。

以下、関連本をご紹介。この本は、RDF周りの技術解説がしっかりしています。

▼Toby Segaran,Colin Evans,Jamie Taylor,大向 一輝(監訳),加藤 文彦(監訳),中尾 光輝(監訳),山本 泰智(監訳),玉川 竜司著「セマンティックWeb プログラミング」(オライリージャパン)
4873114527

こちらは、文脈を情報処理させようとするとどうなるのか。これからは体験の時代ですね。

▼ロバート・スコーブル,シェル・イスラエル,滑川 海彦,高橋 信夫著「コンテキストの時代―ウェアラブルがもたらす次の10年」(日経BP社)
4822250474

体験つながりでもう1点。体験してもらうために、ストーリーが大事だよねというお話です。

▼Jeff Patton,川口 恭伸,長尾 高弘著「ユーザーストーリーマッピング」(オライリージャパン)
4873117321