読書的な何か。

読書と読書にまつわるテクノロジー、雑記など。

書評『頭は「本の読み方」で磨かれる』

はじめに

テレビでもおなじみの茂木健一郎さんによる読書論です。茂木さんは脳科学者ですが、本書は脳科学の知見というより、脳科学に裏打ちされた、ご本人の読書に対する姿勢や考え方、読むためのテクニック等がまとめられている本かと思いました。

内容は5章構成になっており、doksyo-tek的な意訳では、

  1. 読書のメリット
  2. 読書をするとどんな人になれるか
  3. 本の探し方
  4. 本からどう「得る」のか
  5. 厳選本10冊の紹介

についてまとめられています。また、巻末には各章で取り上げた本がリスト化されており、おススメ本が一目でわかるようになっています。

どの章もわかりやすく、かつ刺激的なのですが、詳細は本で確認していただくとして、ここではdoksyo-tekが気に入った3つのフレーズをご紹介します。

その1

「読書のメリット」について述べている部分から。

p27
科学にかぎらず、知性というのは「どれだけたくさんの人の立場で考えられるか」ということだとぼくは思います。それは「読む」ことによって養われる力なのであり、知的活動の現場で、実際に重要視されているのが、積極的な読書なのです。

相手のことをおもんぱかるって、人と人が関わっていく社会においては、最も大事にすべき、基本だと思うんです。そんな大事なことの基礎力は読書を通じて醸成することができるのだと。やはり読書は素晴らしい!

その2

「読書をするとどんな人になれるか」から。実用書、ビジネス書に関する話において、

p95
エッセンスとして抽出されたものは、確かに至宝です。けれどもそこからさらに進んで、自分でそれを体系化し、みずからの足でビジネス書に書かれているような成功をたどるためには、やはり具体的な「一の積み重ね」がいるのです。

ただ本に書かれているテクニックを模倣するだけではなく、「自分が人生のつくり手になるのだ」という意識で本を読んでみてください。

千里の道も一歩から。自分の血肉とするために、ショートカットは存在しません。一歩一歩、丁寧にやっていくのがいい。そして、特に後半の言葉が大事だと思う。読書は疑似体験ですが、それを真似するだけではない。自分のモノにする、自分事として捉える、自分との対比で考える。そうする意識がより血肉化を促進してくれるはずです。

その3

「本からどう「得る」のか」より。文章の好き嫌いでなく、客観的に見て優れているか否か。そんな見方について、

p188
本でもそれと同じように、「自分の好みはさておき、この人の文章は、なぜ多くの人に評価されているのか」その理由が俯瞰的にわかるようになったとき、真の"読書通"の目が備わったと言えるようになるのであって、そのとき自分の言葉も人を動かす説得力を持ってくるのです。

同感! 自分の好みや感覚で評価するのは楽ですが(ってこの3つを選んだのも、まさに好みや感覚なのですが)、やはり多くの人に評価される言葉や文章には、それなりの客観的理由が存在するのだと思います。そこまで曇りなき眼で見定めることができれば、それは読書通と自負していいのかもしれません。

オマケ

茂木流・速読のポイント(195ページ参照)。今度速読についてまとめて考察しようと思っています。その布石です。

  1. 「もくじ」を見て全体を俯瞰する
  2. 「これはちょっとおもしろそう」という見出しがあれば、その項目は重点的に読む
  3. 全体をパラパラめくって、「だいたいこんなことが書かれている」というポイントを把握する

所感

茂木さんの読書に対する考え方がコンパクトに、わかりやすく詰め込まれた一冊だったかと思います。各章末には、まとめとして5個程度の文で章の内容がリスト化しています。本当に時間がなければ、ここだけ拾い読みしてもエッセンスは伝わるのかもしれません。以下、読書リストから読んでみたいなと思った5冊をご紹介です。実際のリストは、ぜひ実際の本でご確認を~。

サラバ! 上

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サラバ! 下

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皇帝の新しい心―コンピュータ・心・物理法則

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奇跡のリンゴ―「絶対不可能」を覆した農家 木村秋則の記録 (幻冬舎文庫)

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宇宙からの帰還 (中公文庫)

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イワン・デニーソヴィチの一日 (新潮文庫)

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