TPAC2016にみる電子出版の未来
はじめに
TPACってご存知でしょうか。World Wide Web Consortium(W3C) Technical Plenary / Advisory Committee Meetings Weekの略で、ティーパックと読みます。W3C(Web標準化の団体)が年一回開催する、専門家による技術集会のようなもので、これからのWebを考える上でとても大事な会議になっています。
今年のTPAC2016は、9月にポルトガル・リスボンで開催され、未来のWebに向けた技術ロードマップが示されました。
- TPAC 2016: W3C Combined Technical Plenary / Advisory Committee Meeting
- W3C Global Web Experts Plan Technical Roadmap for Future of Web
この中に、読書技術(というよりも、広く電子出版一般)に関することがらも述べられていたので、勉強がてら紹介し、考察してみます。
電子出版に関すること
Digital Publishing - The Publishing Community and Digital Publishing Interest Group are collaborating on the evolution of electronic books and how to bring the requirements of authors, publishers and readers to the Web for richer reading and learning experiences, both online and offline.
上記は、ロードマップに示されていた電子出版に関することがらです。意訳すると、「より豊かな読書体験・学習体験を実現するために、どのように著者/出版者/読者の3者の要望をWebに取り入れていくか、議論を続けている」とのこと。
ちなみに、このロードマップでは、Accessibility、Entertainment、Open Web Platform、Payment等々、読書技術に関連する事柄についても言及していますので、一読しておいても良いかもしれません。
更に、具体的な議論は、下記に参考情報があります。IRCのLogも公開済みです。
Agendaによると、以下の項目が議題だったようです。
- W3CとIDPFが議論
- EPUB3.1とEPUB for Education
- Open Web Platform上のPortable Document
- Accessibility
- Open Web Platform上の出版社
- Webベースの出版
- EPUBとWeb出版のツール類
W3Cは、EPUBを推進してきたIDPFと歩み寄りを進めていると聞きます(細かい部分で様々な意見があるようですが)。そこでは、HTML5+CSS3をコアとして、次期バージョンアップ版であるEPUB3.1、教育向けEPUB、アクセシビリティ対応、そしてHTML5をベースとするオープンなWeb環境での出版のありかたについての議論が繰り広げられたようです。
所感
上記の議論を受けて、doksyo-tek的な整理をしてみたいと思います。
いろいろ考えて絵にしてみたのですが、考えた末に単純化した結果、別に絵にしなくてもみんなわかっていること、みたいになっちゃいました。
この絵のポイントは、これらがOpen Web Platform上で簡便に実現できるようになりつつあるということ。つまり、著者は表現したいことが、出版者は配りたいものが、読者は読みたいものが、ワンストップにWebを介してつながってきました、ということだと思うのです。
著者の表現が文字のみならず絵やインタラクションに広がることもありますし(Entertainment)、読者の閲覧環境は様々なハンディキャップに対して同等でなければなりません(Accessibility)。また、価値に対する対価の決済はスムースに行える必要があり(Payment)、これらの管理・運用は容易であったほうがよい(Open Web Platform)。
まぁ言うは易しですが、実際の流れは、フィードバックや修正等があったり、不具合が起こったりと、もっともっと複雑であることは事実です。ただ、根本的にはこの絵に示した非常にシンプルな流れがWebでできるようになったということは、今後の電子出版にとってはとても大きなプラスなのだと思います。
と、なんだか総花的なしめくくりになってしまいましたが、まずはIRCLogをつぶさに眺めて、もう少しリアルな各論に落とし込んでみたいなと思います。