読書に必要な13のこと ~『知的生産の技術』より
はじめに
日本を代表する民俗学者・梅棹忠夫氏の名著『知的生産の技術』は、メモ法、カード利用法、原稿執筆法など、現代でも十分通用する仕事術であふれています。そして、この本の第6章では梅棹氏の「読書」に対する考えが記述されています。今回は、この「読書」の章に焦点を当ててみたいと思います。
概要
読書の章は、全部で13のトピックから成っています。読書のしかた、ノートの取り方、読書歴の整理のしかた、そして創造的な読書について。
さまざまな角度から読書が語られていますが、やはり本書のメイントピックである京大式情報カードの活用は、読書ととても親和性が高い。
現代では物理的なカードを使って整理することはあまり多くないのかもしれませんが、その概念、考えはリアルであろうとバーチャルであろうと、さほど変わりのないものなのだと思います。
読書に必要な13のこと
以下、各項で気になった文を抜き出し、簡単なメモをつけていくという形で列挙してみます。
(1)よむ技術
本というものはどのようにしてよめばいいかという技術的指導書になると、じつはあまりみあたらないのである。
当時は「本の本」というジャンルはあまりなかったのか? ちなみに具体的に挙げられていた本は次の二冊。
(2)よむこととたべること
栄養学と食味評論がはっきりちがうように、読書論においても、技術論と鑑賞論とは、いちおう別のこととかんがえたほうがいいということなのである。
どういう材料を、どう料理して、どのようにたべれば、ほんとうに血になり、つぎの活動のエネルギー源になりうるかという技術論が、ここの問題なのである。
もうきっぱりと、鑑賞じゃない、これは読書技術だ! と言い切っちゃっている。ここで述べるは料理のおいしさ云々ではなくて、料理手法についてだ、ということ。
(3)本ずきのよみべた
どうも日本の教育は、やっぱり教科書中心・講義中心で、本をよませるという訓練方式がひどくかけているのではないだろうか。
読書法などというものは、本来たいへん個別的なものだから、各自で自分に適した流儀のものをつくりだすほかない、というかんがえかたもある。たしかに、けっきょくはそうだろうが、はじめからそういったのでは、技術の公開、共同開発の道をとざしてしまうことになり、結果的には秘伝主義になる。教育や訓練ということもありえなくなる。実際問題としては、おおくのすぐれた知識人の意見をきいてみると、意外に共通の技術や読書法式があるものだ。
読書を技術・技法という観点でみてみると、なんらかの共通項、共通方式みたいなものがありそうだと。長年読書をしているとなんとなく感じる経験則みたいなものか??
(4)「よんだ」と「みた」
本というものは、はじめからおわりまでよむものである。
著者のかんがえを正確に理解するための基本的条件の一つだからである。
内容の正確な理解のためには、とにかく全部よむことが必要である。
共通項のひとつかな? わかりやすい。最後まで読んだ本は「よんだ」。一部分だけ読んだ本は「みた」。著者の考えを正確に理解するには、全部読むのが基本!
(5)確認記録と読書カード
一冊の本をたしかに「よんだ」ことを、自分自身のために確認しておくという作業は、読書経験を定着させるために、たいへん有益であろう。
この有益なことを明確に記録するために、2つのことを提案している。①読了の印(いつ読み終えたか)は本そのものに記録し、②読んで感じた内容やメタデータ等は京大式カードに記録する、というもの。
(6)読書の履歴書
とにかく自分の読書歴のすべてが集約されて眼前にあるということは、自分自身の知的活動力に対してあまり幻想的な評価をしないために、ひじょうに役だつ。
年100冊というのは、ふつうの人間としては限度ではないだろうか。
カードがたまると、読んだ分だけ振り返りができる。これをやる人とやらない人では読書を血肉にできる速度がまったくもって違う気がする(当然、振り返るほうが早く吸収できる)。
(7)一気によむ
一気によんだほうが理解という点では確実さがたかい。すこしずつ、こつこつよんだ本は、しばしばまるで内容の理解ができていないことがある。
わたし自身は、二つの系列の読書を平行的にすすめることにしている。
ここでいう二つの系統とは、自分の専門分野の本と、関連の薄めの本。一気に読んだほうが理解が進むんだけど、読み切れないことが多いし、疲れるので、気分転換できる関連薄めの本も用意して、同時平行で読むスタイル。
(8)傍線をひく
(都度ノートを取ることについて)本ははじめからおわりまでよむということを眼目とすれば、こういうざせつしやすい方法はよくない。
かきぬいておきたいなどとおもう個所 ~略~ 心おぼえの傍線をひくほうがよい。
要するに、一番大事なのは一気通貫で読み進めること。ノートを取るとか、線を引くとか、読む行為の邪魔になっては元も子もない。
(9)読書ノート
わたしは、よみあげた本を、もう一どはじめから、全部めくってみることにしている。そして、さきに鉛筆で印をつけたところに目をとおすのである。そこで、なぜ最初によんだときにそこに印をつけたのかを、あらためてかんがえてみる。 ~略~ これはほんとうにノートしておく値うちがあるとおもわれるところだけを、ノートにとるのである。
カードの上欄には、その内容の一行サマリーを記入し、下部に、その本の著者、表題および該当ページを記入する。
まずは全部通して読んで、気になるところはサクッとマーキング。マーキングには徹底的に負荷をかけない。その上で、今度は吟味して選ばれた箇所だけ、京大式カードに転記していく。ここで選ばれた箇所は、その時のその人にとって意味のある個所というわけ。
(10)本は二どよむ
傍線にしたがってのノートつけは、よんだあとすぐではなくて、数日後、または数週間後におこなうのである。そのあいだ、本の現物は、目のまえにつんどかれる。
今日のように本をたくさんよまねばならぬ時代にあっては、一冊の本をなんどもよむなどということは、事実上できはしないのだ。しかし、なんどもよむほど理解がすすむのは事実である。そこで、実際的で効果のある方法として、わたしはこういう「読書二遍」法を実行しているのである。
京大式カードにエッセンスを絞り出すために、あえて間をあけて本質を見極める作業をしている感じ? 百遍は無理だとしても二回繰り返すだけで、しかも二回目はかなり凝縮されているのでこれだけでもとても定着しそう。
(11)本は二重によむ
(本に傍線を入れる二系統について)第一の系列は、「だいじなところ」であり、第二の系列は「おもしろいところ」である。
だいじなところは著者が主張したい部分、おもしろいところは読者の琴線に触れた部分。確かに。全然本の文脈と関係ないけど、気になってしまう箇所ってあるある。
(12)創造的読書
わたしの場合をいうと、じつはカードにメモやらかきぬきやらをするのは、全部第二の文脈においてなのである。
(著者が主張したい部分は既に本に書かれているのに対して)「わたしの文脈」のほうは、シリメツレツであって、しかも、瞬間的なひらめきである。これは、すかさずキャッチして、しっかり定着しておかなければならない。
傍線をひくときに、なにがひらめいたのかを、きわめてかんたんに、欄外に記入しておく。
いわば本をダシにして、自分のかってなかんがえを開発し、そだててゆくというやりかたである。
楽しむ読書(=消費的読書)に対して創造する読書(=生産的読書)のご提案。著者の主張を捉えつつ、自分のヒラメキも活かしてしまうなんて、素敵な読書ではないか!
(13)引用について
本は何かを「いうためによむ」のではなくて、むしろ「いわないためによむ」のである。つまり、どこかの本にかいてあることなら、それはすでに、だれかがかんがえておいてくれたことであるから、わたしがまたおなじことをくりかえす必要はない、というわけだ。
引用の多さは自分の創造物の少なさとの兼ね合いだという考え。最後に「自分が知らないだけで、どこかで書いてあるかもしれないこと」に対して身のすく思いであると。
かつて恩師が「あることを思いついたら、世界に三人は同じことを考えていると思え(だからとにかく急いで実験して世界で最初に思い付きを具体化せよ)ということを言っていたのを思い出した。世界は広いんだ。
まとめ
梅棹氏の読書に関する考え、読書に応用した京大式カードの使い方がよくわかる13のトピックだったと思います。
個人的に面白かったのは、創造的読書。読み物として消費する読書も相当面白いんだけど、自分のヒラメキや考えが読書を介して表出してくる読み方はかなりその本をしゃぶりつくしている感じがあって良い。こうやって得たヒラメキや考えはもちろん他でも活用可能。「本から知見を得る」ってこういうテクニックがあってこそ、より具体的に自分のモノになるのではないか、と思いました。
参考
原著にあたりたくなった方は、こちらでどうぞ。
書評『超速読力』
はじめに
本ブログにも何度かご紹介している齋藤孝先生の、割と最近の新書(2019年7月初版)の書評をしてみます。
齋藤先生は読書に関して様々な著作がありますが、今回の『超速読力』では、読書の中でも、とりわけビジネスのシーンで役に立つ読書を取り上げています。そしてそのメソッドは、実は名著と言われる小説や古典を読む際にも適用できるというものでした。
概要
本書は、①「超速読力」を身につけるための基礎準備、②資料を読む、③新書・実用書を読む、④小説・古典を読む、をメインとし、より深く技術を身につける箇所では、具体的なトレーニング方法と実践編がついているという構成になっています。
超速読力とは
齋藤先生の定義はとてもシンプル。ゆえにわかりやすいものです。先生は超速読力を次のように定義しています。
瞬間的に読む力 + 読んだ内容についてコメントを言う力 = 超速読力
限られた時間で膨大な資料や本の内容を理解し、かつ、気の利いたコメントまで求められる現代のビジネスシーン。資料の「読み方」に着目することで、素早くインプットとアウトプットをコントロールするというコンセプトはとても野心的だと思いました。
基礎準備としての心構え
いくつかの心構えが記されていましたが、doksyo-tekは、特に次の視点が気になりました。せっかく時間を使って読むわけですので、効率的に、ヌケモレのなく超速読力を手にしたいものです。
p28
資料や本だと、だいたい真ん中以降、本でしたら「第四章」あたりにけっこう大事なことを持ってくる著者が多いように思います。
どこに大事なことが書いてあるのか、目安になりますね。
p36
「とにかく"獲物"を持ち帰る」を至上命令として、九割の文章は断捨離し、ときめくものだけを持ち帰る。
とにかく当たりをつけて獲物をゲットする。間違っていても気にしない。この姿勢は大事そうです。
p41
テレビのコメンテーターになったつもりで、つねにコメントを用意しながら読むくせをつけよう。
これも大事。どんな小さなことでも「考えてませんでした」はアウト以外の何ものでもないと思います。
具体的な読書法
この部分は、本書を読んだほうが圧倒的にわかりやすいです。①資料、②新書・実用書、③小説・古典と、大きく3ジャンルにわけて、それぞれの特性に応じたコツや手法をおしげもなく披露してくれています。
記されているようなやり方に慣れてくると、確かに読むの早くなりそうですし、ただ漫然と読むのではなく、自分の意見もきちんとコメントできるようになりそうだ、と思いました。
今すぐに実践したいトレーニング法
先生の授業でも取り入れているトレーニング法らしいのですが、いくつか紹介されていた方法のうち、次の2点は今すぐにでも実践したいものでした。
資料を1枚15秒で読むトレーニング
こういう反復トレーニングは、日々の訓練で高く飛べるようになる忍者のように、ジワジワと効いてくるのだと思います。ほんの15秒であれば、会議中やとっさの資料提示などにも十分対応できる時間です。
- A4の紙に書かれた文章を10枚用意する。
- 時計を計る。ストップウオッチを用意。
- よーいドン、でスタート、1枚15秒、10枚を2分半で読み終えるトレーニングをする。
- 友人と一緒にやると、緊張感が高まってより効果的。
新書を3分で読む「新書トレーニング」
先生曰く、
本をちゃんと読んでいる人からすると、「そんなものは読んだうちに入らない!」と怒られそうですが、一冊読んでもすぐに忘れてしまったり、終わりまで読めずに途中で行き倒れるくらいなら、三分で一冊読めて、自分のコメントが言えるほうがずっと生産的なのではないでしょうか。
とのこと。
これは完全に同意。友人とやるもよし、ですが、「新書トレーニング読書会」を開いても楽しそうです。その場で読むわけなので、事前に読んでこなくてはならないという読書会ならではのハードルもなくなります。
- 友人と二人で、各々が読んだ新書を交換する
- 「せーの」で読み始める
- 最初は10分で読む。慣れてきたら5分→3分と縮める
- 読み終わったら、相手に「読んだ本の内容」と「自分のコメント」を話す
所感
本書の「おわりに」のタイトルは「書を買って、カフェに入ろう!」というものでした。本書で紹介されているやり方を少しずつ実践していけば、最初はなかなかうまくいかずとも、かなり早い段階で「カフェでくつろぐ15分間で、サクサク本が読めてしまう」ようになるのではないでしょうか。
もちろん、どんな本も今回のような読み方をするのがいいわけではないと思います。適材適所、ゆっくり読みたい本はゆっくり読めばいい。ただ、本書で紹介されているような、お仕事系の資料や本は、それこそ鮮度が命。ある程度テクニックを持ってスピーディな短期決戦をしてみたいと思いました。
そして、せっかくなので実践編として、「3分で新書を読む×100冊プロジェクト」を始めます!(書いてしまった・・・)今後、このブログを通じて、どんなふうに実践していったかをレポートしてみたいと思います。
本の"新しい"読み方 ~BOOK TECH~ by AMP
はじめに
先週の金曜日(10/18)、Peatix経由で「本の“新しい”読み方 ~ BOOK TECH ~ @東京・日本橋 by AMP(アンプ)」というイベントに参加してきました。
イベントの趣旨は「要約して読む」「分割して読む」「聴いて読む」という新しい本の読み方を提供するゲストと、読書のアップデートを考えるというものでした。読書の秋にふさわしく、とても面白かった! ので、簡単なメモを残しておきたいと思います。
ゲストは、次のお三方。
- 要約して読む:フライヤーの大賀氏
- 分割して読む:NOT SO BADの大西氏
- 聴いて読む:オトバンクの久保田氏
この3名に、ファシリテータとしてAMPの木村氏が参加。次々と気になるテーマを繰り出し、三人がそれぞれの視点から深掘りをしていく進行で、あっという間の1時間15分でした。短めでしたが、その分内容が鋭く、とてもわかりやすくて一体感のあるイベントだったなぁと思いました。
テーマ別・気になった言葉や話
以下、各テーマについて気になった言葉や話を整理してみます。
テーマ1:本、新書マーケットの現状について思うこと
- 本は認知度の向上が売り上げにつながる。ネットでの話題づくりから、書店でのフェアまで初速、初めの起爆剤が大事。
- 自己啓発系、資格系など、緊急度が高いものは売れる。
- 知るきっかけ、加えて丁寧なマーケティングが大事。映画化や関係者のラジオ出演など、機会を逃さずにプロモーションしていくと売れていく。
テーマ2:新しい読書が向いているシチュエーション
- スマホに合った形で、スキマ時間の消費が狙うところ。
- スマホに合った形の一例:改行などで読みやすさを考える、1000ページもの長編を縦書きでページめくりさせるのは正しいのか考える、など。
- 耳はこれからの領域。通勤時に新聞ダイジェスト、就寝時におやすみロジャーなど、新しいシチュエーションを作ることが可能。
テーマ3:新しい読書が向いているコンテンツ
- 見る、聞く、そして体験。体験に属する「読書会」は注目のコンテンツ。
- 選書。自分で選ぶよりも、誰かに選んでもらう、誰かに与えられるほうが読まれる傾向にある。
- 積ん読の本を聞く。分厚い本は紙でも買うが、2~2.5倍速で聞くのに向いている。
テーマ4:ビジュアルコンテンツ(動画)との比較(本ならではの強みは?)
- 考えながら読むことができること(動画も、要約も、考えながら通読することの代替にはならない)
- 『読んでいない本について堂々と語る方法』
- 読書は能動的で、脳に余白がある。テレビは受動的で、脳が疲れているときなど判断ミスを誘発しがち(通販番組で思わず、みたいな)。
所感
要約する、分割する、聴く、というそれぞれの方法で読書に新しいアプローチをしていたのが面白かったです。もちろん、それぞれは個別に成り立っている方法論なのですが、組み合わせることでより新しい読み方が作れそうだなと思いました。要約したものを分割して読み、気になったら倍速で聞く、みたいな(いや単純すぎか・・・)。他メディアとの可処分時間の争奪という現状においては、このような方向はひとつあるのだろうなと思います。
個人的に興味があったのは、テーマ3あたり。
読書体験はひとりからみんなに広がることで出てくる新しい発想がありそう。読まなくても行ける/サマリーだけ読めば参加できる気軽な読書会って行ってみたくなります。
選書も面白い。最近注目されているインディペンデントな書店は選書のセンスがとても光っていますし、HONZなどの書評サイトは、そもそもその本を選んだかー!って部分でもう心が持って行かれます。AI選書みたいな話題もどこかで見聞きした気がします。
積ん読も興味あり。せっかく買われたのに、手元に置かれたのに、肝心の中身がなかなか消費されない本たち。自分の積ん読をいかに効果的に消費できるのか気になりますし、こっそり他人の積ん読も見てみたい。
なんだか、個人的興味が散乱していますが、テーマ3周辺にはとても新しい読書技術が活きてくる気がしています。
Q&A
会場からは「従来型の読書家のアップデートは?」「フライヤーブックラボ(読書会)のコンセプトは?」「本の適正価格ってなんだろう?」といった質問があがっていました。各質問、それだけで十分イベントができてしまう質問だったかと思います。このへんは、doksyo-tekも今後考えてみたいと思いました。
おまけ
読みたくなった/読み返したくなった本です。
スマホを落としただけなのに (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)
- 作者: 志駕晃
- 出版社/メーカー: 宝島社
- 発売日: 2017/04/06
- メディア: 文庫
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読書量と学習
ベネッセ教育総合研究所が、面白い実験レポートのサマリを公開していました。
どういう実験かというと、子どもの読書量の違いが学力の違いに影響を与えているかどうかを調べたというものです。さすがベネッセさん。毎月36万人が利用する電子書籍サービスを使って調べたのだとか。
結果は、簡単にまとめると「読書量が多い子どもほど、学力を伸ばしている」ということらしいです。なんとなく理解できる事柄が、定量的に示された結果となりました。特に、算数においては読書量の多い子と少ない(なし)の子で、偏差値が4.8ポイントも開いたとか。ベネッセでは、この結果について、次のように述べています。
「算数」の学力変化において特に影響が見られた理由としては、読書量の多さが「文章中に与えられた問いや条件を読み取る力」を高めていることや、読書習慣によって学習習慣が整い、「積み上げ型」の問題(計算問題など)の点数向上にプラスの効果をもたらしたことなどが推察されますが、はっきりとした要因を突き止めるためにもさらに分析を重ねていく予定です。
因果関係が推察されるけど、まだはっきりしないので突き止めますとのこと。これは楽しみな研究になりそうです。そういえば昔、親に「国語ができれば他の科目は何でもできる。数学だってそうだ。なぜなら問題の意図を正しく理解できるのだから」と、数学の出来の悪さを慰められたことを思い出しました。
余談はさておき、読書による効果は今後の追実験で明らかになると期待して、、、世の中では同様に読書の効用を謳う情報がある反面、「読書離れ」に関するニュースや報告も多く存在しています。
文化庁によれば、1か月に本を1冊も「読まない」と回答した人が47.5%いたそうです。
全国大学生活協同組合連合会(全国大学生協連)が2019年2月に発表した「第58回学生生活実態調査」では、1日の読書時間が0分という大学生が半数にのぼっています。
プレジデント誌が企業の管理職・役員1000名に行われたアンケート調査では、その約4割が月に1冊未満、ほとんど読まないと回答しています。
仮に、読書量の多さが学力に影響するという効果が大人にも適用されるとするならば、「読書の効用が明らかなのに、読書離れが進んでいる」という不思議な現象が見えてきます。これは読書好きにとってみたらひとつのチャンスなのではないでしょうか。世の中の人たちが読書から離れていく中で、読書の効用を存分に享受して、かつ、読んでない人との差別化を図れる可能性があるのです。
では、限られた時間を有効活用すべく、数多ある書籍の中から、効果的に読書の効用を得るにはどうしたらよいか。doksyo-tekは立花隆さんの読書法に注目しています。
つまり、たくさんの書籍から自分に最適な一冊なんて選べない(AIの進化で選べる時代が来るかもしれないけど)。だから、とにかく当該のジャンルの本をたくさん/ざっと/メモなど取らずに読む。読む。読む。そうすることで多角的にその分野が立体的に見えてくるのだとか。これ、大変そうに見えて、あれこれ選ぶ時間や丁寧に読み込んだ気になる時間、メモを取る時間などを考えたら、トータルのコストパフォーマンスは一番いいのではないかと思うのです。
読書には学力を伸ばす効果がある、読書離れが進んでいる、そんなニュースから考えたことをつらつらと書き連ねてみました。当該のジャンルなんてなんでもいいんだと思います。仕事や学業に関する内容、生活に関する内容、単なる興味。doksyo-tekもサクッと気になるジャンルの読書をして、読んでない人と天地の差をつけちゃおうと思っています。
PISA型読解力に見る、読解力の現状と今後
1.はじめに
なんか大きなタイトルを掲げてしまいましたが、PISA型読解力って何? 現状は? 今後は? みたいな点をdoksyo-tekなりにまとめたメモになります(一部、突拍子もないことも述べていますが)。短めのメモなので、サラサラっと読んでいただければと思います。
2.PISA型読解力とは
読解力の定義のひとつに、PISA型読解力があります。
PISAとは、OECD(経済協力開発機構、Organisation for Economic Co-operation and Development)が進めている「国際的な学習到達度に関する調査」(Programme for International Student Assessment)のことです。
日本の場合、国立教育政策研究所がその実施を担っており、2000年から3年おきに実施されています。その実施内容は、以下のページに丁寧にまとめられています。興味のある方はぜひ一通り眺めてみるのはありだと思います。
PISA型読解力とは、「自分の持っている知識を活用しながら資料やデータを深く読み取り、それに解釈や評価を加えてわかりやすく表現する力」のことを意味します。この力は、これからの基礎学力であり、そして求められる力として、注目されています。
3.読解力向上プログラムと施策
PISA型読解力では、より具体的に次のような特徴を有するものを「読解力」として定義しています。
- テキストに書かれた「情報の取り出し」だけではなく、「理解・評価」(解釈・熟考)も含んでいること。
- テキストを単に「読む」だけではなく、テキストを利用したり、テキストに基づいて自分の意見を論じたりするなどの「活用」も含んでいること。
- テキストの「内容」だけではなく、構造・形式や表現法も、評価すべき対象となること。
- テキストには、文学的文章や説明的文章などの「連続型テキスト」だけでなく、図、グラフ、表などの「非連続型テキスト」を含んでいること。
2003年に実施されたPISA調査では、日本は読解力がOECD平均程度まで低下していたそうです。そこで、文部科学省は2005年12月に「読解力向上プログラム」を発表します。
これは、上述の読解力を向上させるため、次の3つの目標が掲げられています。
- テキストを理解・評価しながら読む力を高める取組の充実
- テキストに基づいて自分の考えを「書く力」を高める取組の充実
- 様々な文章や資料を読む機会や、自分の意見を述べたり書いたりする機会の充実
この目標を具体的に遂行するため、学習指導要領と、全国学力・学習状況調査の両面で様々な施策が進められてきました。
学習指導要領:「言語活動の充実」という方向性の提示。具体的には以下のようなこと。
- 国語力:
- 漢字の読み書き、音読、暗唱、対話、発表などによる国語の能力
- 知的活動の基盤:
- 観察、仮説、比較、分類、関連付け、帰納的/演繹的説明、結果の評価やまとめなどの能力
- コミュニケーションの基盤
- 音楽、図工、体育から感じ取ったことの、言葉や歌による表現
全国学力・学習状況調査:国語と算数(数学)において基礎的学力A、活用型学力Bを測るという施策
- 活用型学力Bは、資料から読み解くタイプの問題
4.2015年のPISA調査
このような施策を打ってきたにもかかわらず、2015年のPISA調査では、読解力の結果が芳しくなかったようなのです(図1の「読解力」の推移を参照)。
図1.PISA2015の平均得点及び順位の推移
doksyo-tekも「読書的ニュース」で取り上げていました。
この状況で次の一手は何か。とりあえずは学習指導要領にPISA型読解力の必要性が喚起されたそうですが、doksyo-tekはさらなる策が必要なのではないかと思っています。
5.PISA型読解力を高める施策
最近ですとInstagramやTik-tokなど、画像系・動画系の投稿アプリがさかんに使われています。例えば、これらを用いて、投稿された画像の意図を読んだり、どういう脈絡で自分のタイムラインに出現したのか、等を考えてみるのはどうでしょうか。さらに、その考えはアウトプットとしてSNS上にコンパクトに言葉で投稿する。そうすることで、観察・仮説・説明・表現といった多くの手法を具体的に学んでいくことができるのではないでしょうか。
まぁ、なかなかぶっ飛んだことを書いているなということはわかっています。それに、投稿アプリを使っただけではPISAの求める読解力はカバーしきれていないこともわかります。ただ、なじみやすさというユーザビリティの観点からみると、指導要領や調査だけではなかなか難しい「即効性のある効果」を出せる可能性があるのではないか、などと思うのです。
参考文献
- 田中 博之, 読解力とはどのような力か, 情報の科学と技術, 2018, 68 巻, 8 号, p. 390-394, 公開日 2018/08/01, Online ISSN 2189-8278, Print ISSN 0913-3801, https://doi.org/10.18919/jkg.68.8_390, https://www.jstage.jst.go.jp/article/jkg/68/8/68_390/_article/-char/ja
- 文部科学省初等中等教育局教育課程課, 言語能力の育成に向けて~新学習指導要領における改善・充実~, 情報の科学と技術, 2018, 68 巻, 8 号, p. 395-399, 公開日 2018/08/01, Online ISSN 2189-8278, Print ISSN 0913-3801, https://doi.org/10.18919/jkg.68.8_395, https://www.jstage.jst.go.jp/article/jkg/68/8/68_395/_article/-char/ja
- OECD生徒の学習到達度調査(PISA2015)のポイント, https://www.nier.go.jp/kokusai/pisa/pdf/2015/01_point.pdf ,(accessed 2019-08-05).