読書的な何か。

読書と読書にまつわるテクノロジー、雑記など。

『戦略読書』定点観測 - 2017年11月

はじめに

ためこんでしまった戦略読書分析の第3弾。2017年11月分です。

こちらは戦略読書の投稿では毎回出している読書ポートフォリオ・マトリクス(Reading Portfolio Matrix, RPM)。

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図1 2017年版のRPM

定点観測

以下はRPMに基づく分類別読んだ本と一言メモです。

鍛錬基礎

なし

 

鍛錬応用

井田寛子の気象キャスターになりたい人へ伝えたいこと

井田寛子の気象キャスターになりたい人へ伝えたいこと

 

やっぱり相当がんばっている気象予報士のお仕事本。受験も、短い予報時間でどう掴むかも、あらゆる方向から作り上げていくからこそ、あのクオリティが出せるんだなと実感。プロ、だよなぁ。

 

レゴでつくろう世界の名建築

レゴでつくろう世界の名建築

 

 p183

(レゴアーキテクチャーシリーズを考案した)アダム・リード・タッカーは、自分のレゴモデルで「その建物の本質と純粋な彫刻的形」をとらえることに最も関心があり、完璧なプロポーションや精密な細部にはあまり関心がない。

シンプルな組み合わせで本質を表現すれば、自ずと佇まいが似てくるということ。

 

街角図鑑

街角図鑑

 

p148

"計画や生産の立場に思いを馳せながら街角商品を観察すると、自分との距離を近くに感じることができ、実際の成り立ちを知りたくなってくる。"

 

「知性を問う」における朝井リョウさんのインタビュー記事「小説は何者が生み出すのか」を目当てで。後述しています。

 

趣味基礎

大人版パーマン。家庭とヒーローの両立に苦労するお父さん。解説で福田雄一氏が述べているが、F作品の根底には「人間っていいものだ」というメッセージが流れている。F先生はいつだって人を信じている。だから、作品がほんのりとあたたかいんだろうな。

 

何度も読める仕組みだらけで、今読み返しても飽きない! 大ぐいせんしゅけんとダイエット、対で読まないとダメ!

 

イシシ・ノシシのフィギュアゲットしました!! これに続く撮影しなくちゃ。

 

東京シャッターガール 1巻 (ニチブンコミックス)

東京シャッターガール 1巻 (ニチブンコミックス)

 

その名の通り、東京各所をカメラで撮影していくお話。主人公の高校生の目を通して、東京という街が写し出されていく様が心地よくて、なんとも瑞々しい。

 

ドカベン 殿馬一人編 (秋田トップコミックスW)
 

殿間はドカベンで好きなキャラクター。飄々としている風だが、実はとても努力家。天才って、99%の努力ができる人なんだよなということを再認識させてくれる。

 

はれときどきぶた (あたらしい創作童話 13)

はれときどきぶた (あたらしい創作童話 13)

 

自分の感じたこと、考えたことはちゃんといえるようにならなくちゃいけない。ばかなことをはっきりいえなくちゃいけないんだ。

 

何者 (新潮文庫)

何者 (新潮文庫)

 

えぐられた。小説は現実じゃないから時間の無駄っていう人にも読んでもらいたい。現実じゃなくても、言葉で紡がれる現実ぽさは、現実よりもリアルに来る。

 

ルビンの壺が割れた

ルビンの壺が割れた

 

なんだこの後味の悪さと、もう一度読みたくなる感じ。怖い。怖いよ。気味が悪いと行った方がいいか。行間を読むというが、それ以上にもっと想像力が必要な壮大なお話。

 

時をかけるゆとり (文春文庫)

時をかけるゆとり (文春文庫)

 

久々に大好きな作家が現れた。自分よりもとても年下なのに、心を揺さぶられる。こういうみんなが感じる感覚を言語化できる人って、本当にすごいな。遠藤周作の早稲田版。中学生のときに出会ってたら、憧れただろうな。

 

趣味応用

読書の腕前 (光文社新書)

読書の腕前 (光文社新書)

 

読書で得られるもの。忍耐力。理解力。そして、自分がいかにものを知らないかを知る、ということ。

何冊も気になる本が紹介されていたので、書評まとめをしておきたいな。

 

分析

11月は『かいけつゾロリ』や『はれときどきぶた』等、子どもの名作を振り返りました。

また、朝井リョウさんのブームが9月以来続いており、『何者』や『時をかけるゆとり』を読みました。彼のエッセイはめちゃくちゃ面白いです。早稲田の朝井リョウ慶應遠藤周作。時代も書き方も視点も異なるんだけど、なんとなく、エッセイの早慶戦ができそうな共通点があるんじゃないかと感じました。

さらに、朝井リョウさんについては、『ダイヤモンドハーバードビジネスレビュー 2017年 5 月号』の特集「知性を問う」におけるインタビュー記事「小説は何者が生み出すのか」も読みました。AIが台頭してきた時に問われる人間の価値=創造性について書いたという『ままならないから私とあなた』、絶対読みたいです。

ということで、以下は11月のRPMグラフ。積み上げ縦棒が冊数(色は形態)、折れ線グラフが読書時間です。

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図2 今月のRPM

累積はこちら。

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図3 累積RPM

次に読む本

今月は次の本を選んでみました。選び方は、今年1月のブログをご参照ください。

創作の極意と掟 (講談社文庫)

創作の極意と掟 (講談社文庫)

 

 

以下、「次に読む本」ストックリストです。

参考

 

『戦略読書』定点観測 - 2017年10月

はじめに

ためこんでしまった戦略読書分析の第2弾。2017年10月分です。

こちらは戦略読書の投稿では毎回出している読書ポートフォリオ・マトリクス(Reading Portfolio Matrix, RPM)。

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図1 2017年版のRPM

定点観測

以下はRPMに基づく分類別読んだ本と一言メモです。

鍛錬基礎

なし

 

鍛錬応用

リーダーは自然体 無理せず、飾らず、ありのまま (光文社新書)

リーダーは自然体 無理せず、飾らず、ありのまま (光文社新書)

 

ストレスには、正のストレスと負のストレスがあると思う。自分を成長させてくれる、正のストレスがかかるよう、場や周囲を変化させられる人になりたい。そんなこと、文字通り自然体で教えてくれる本。

キャリア構築関係って読んだことなかったけど、増田さんの実践と、金井先生の理論がサンドイッチされていてとても分かりやすかった。

 

幸せを科学的に捉えるための、雑談。特に参考文献もなく、ざっぱくに話が進むが、幸せになるためにしてみよっかな、と思えることも何点かあった。

191ページ

「専門性に頼るとけっこう早く限界がくると思うんです。それよりも「無知」で挑んだほうが強い」

一点豪華主義ではなく、専門性をベースとしつつも広く触手を伸ばしていく。確かにそんな活動をしている人は、とても楽しそうに見えるかも。

 

PRESIDENT (プレジデント) 2017年 7/17号 [雑誌]

PRESIDENT (プレジデント) 2017年 7/17号 [雑誌]

 

ややスノッブな分析にちょっと、なぁと思いつつも、マネー系、勉強系、健康系で面白そうなアプリを紹介していたので、古本だけど買って良かった。

 

趣味基礎

藤子・F・不二雄先生への愛情120%で書かれたマンガ。先生の息遣いや優しさが伝わってくる、秀作。ホントに、偉大な人だったんだなぁ。

 

なんとなくだけど、MASTERキートンの美術版みたいな感じがする。一話読み切りが多いけど、も少し長編で読んでみたい。と1巻の感想をメモってたら、2巻の最後の話は4話分でボリュームがあってよかった。

 

うろんな客

うろんな客

 

柴田元幸のあとがきから。

「死に対する病的な強迫観念をことさらにさらけ出すのでもなく、良識の破壊を意図して肩肘を張るのでもなく、ただ何のてらいもなく、軽妙に、酒脱に死を描いた」

 

郵便配達と夜の国

郵便配達と夜の国

 

『シノダ!』シリーズの挿絵を描いている方の作品なのか。少し不思議(SF)な、ジブリ的な世界観が漂う短編集。

 

趣味応用

一貫してスマートな情報の取り扱い方マニュアル。知的生産の技術を越える本はそうそうないジャンルなのかも。

中で、本に関する考え方も載っていて、「「面白い本」を読むには「つまらない本」に手を出さない」という、よく考えたら当たり前だけど意外と実行できていないことが端的に指摘されていた。なるほど、意識してみるのはアリだな。

 

分析

10月は新書がアツい月でした。『リーダーは自然体 無理せず、飾らず、ありのまま (光文社新書) 』は進められて。なかなか自分では手を出さないジャンルでしたが、読んでみると面白く、おススメされるのもいいなぁと思いました。

こちらが10月のRPMグラフ。積み上げ縦棒が冊数(色は形態)、折れ線グラフが読書時間です。

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図2 今月のRPM

累積はこちら。

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図3 累積RPM

次に読む本

10月は、次の本を選んでみました。選び方は、今年1月のブログをご参照ください。

美しい世界の傑作ミュージアム 何度でも行きたい素敵な博物館、美術館

美しい世界の傑作ミュージアム 何度でも行きたい素敵な博物館、美術館

 

 

以下、「次に読む本」ストックリストです。

参考

 

『戦略読書』定点観測 - 2017年9月

はじめに

戦略読書の分析をだいぶ貯めてしまいました。これから3回の投稿で、9月~11月までを簡単に振り返ろうと思います。こちらは戦略読書の投稿では毎回出している読書ポートフォリオ・マトリクス(Reading Portfolio Matrix, RPM)。

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図1 2017年版のRPM

定点観測

以下、軸別に9月に読んだ本とその一言メモになります。

鍛錬基礎

なし

 

鍛錬応用

地球のハローワーク

地球のハローワーク

 

和訳が地球のハローワークだが、ただのワークのほうがしっくり来るな。

世界中には本当にさまざまな仕事があり、それを再認識させてくれる写真集。技術によって、人間の働く様が変わる面と、変わらない面があるのが面白い。

 

趣味基礎

流 (講談社文庫)

流 (講談社文庫)

 

70年代から80年代の爽快青春物語。なんというか、風景や情景が目に浮かぶだけじゃなくて、匂いと音が感じられる小説だった。500ページ近い大作だけど、最後は終わらないで欲しいと思えた本だった。

 

世界地図の下書き (集英社文庫)

世界地図の下書き (集英社文庫)

 

353ページの佐織里の発言。

「いじめられたら逃げればいい。笑われたら、笑わない人を探しに行けばいい。うまくいかないって思ったら、その相手がほんとうの家族だったとしても、離れればいい。そのとき誰かに、逃げたって笑われてもいいの。」「逃げた先にも、同じだけの希望があるはずだもん。」

朝井リョウの小説には、根底にやさしさが流れている。だから重いテーマでも読んでいて救われる。

 

趣味応用

なし

分析

9月は3冊しか読みませんでした。思えば、お仕事多忙だったこともありますが、久しぶりに小説をじっくり読んだなぁという印象もあります。たぶん、久しぶりの小説で時間がかかったのかもしれません。

こちらが9月のRPMグラフ。積み上げ縦棒が冊数(色は形態)、折れ線グラフが読書時間です。

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図2 今月のRPM

累積はこちら。

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図3 累積RPM

次に読む本

今回は3冊から、次の本を選んでみました。選び方は、今年1月のブログをご参照ください。

楽園のつくりかた (角川文庫)

楽園のつくりかた (角川文庫)

 

以下、「次に読む本」ストックリストです。

参考

 

読書的ニュース2017-09

Twitter@doksyo_tek)につぶやいた#読書的ニュース、2017年9月分です。

  • ハッシュタグでトピックスを分類し、そのままモーメント化
  • テーマ串刺しでモーメント作成
  • アーカイブしたモーメントを読書DBとして活用

いろいろ試してみたいけど、日々のツイート中心でサボり気味です。

twitter.com

人工知能型出版プラットフォーム

はじめに

ドイツに人工知能を活用した出版プラットフォームがあるという記事を読みました。

getnews.jp

「Inkitt」は、2万人以上の書評家、ブロガーらを含む読者と作家を直接つなぐオンラインコミュニティでありながら、人工知能による“データ駆動型出版エージェント”の役割を担っているのが特徴だ。

データ駆動型とは、読書の閲読パターンや人口統計学的な属性などから、ヒットしそうな作品を予測することをしているそうです。実際、どんな計算をしているのでしょうか。

調べてみた

まずはこの記事を読んでみました。

www.inkitt.com

読み進めていくと、

Based on the algorithm that we have developed that analyses reading patterns, we can predict much better if a book has the potential to reach a larger readership upfront, based on crowd wisdom.

なるほど、「the algorithm that we have developed」へのリンクがあるので、このリンク先に計算の考え方がありそうです。以下がリンク先。

www.inkitt.com

まぁ、予想していましたが、やんわりとした文章で人工知能アプローチがいかにすごいかは書かれていますが、それがどんな仕組みかは書かれていませんでした。実際に、Inkittにユーザ登録して、試してみなさい、と。

This enables us to make objective and data-driven decisions on whether a story has the potential to become a bestseller. This is all based on the behaviour of your readership – even if you only have a few readers in the beginning.

ここでのThisは読者の閲読パターンを解析するAIアルゴリズムを指しています。そのアルゴリズムがあれば、最初は数人の読者であっても、その読者が求める傾向がわかるのだとか。

ううーん、気になる。でも、限られた時間ではこれ以上調べることができませんでした。学会関係とか特許関係を調べてみると、もう少し手掛かりがあったかもしれないなぁ。

考えたこと

少し前に、ピケティ本『21世紀の資本』の電子書籍版でハイライトされたページ数を調べたところ、700ページもある大作なのに26ページ目までしか読まれていない、という分析がありましたが、おそらくInkitt社はもっと精緻に様々な角度から閲読パターンを分析しているのでしょう。

news.careerconnection.jp

doksyo-tekの中ではかなり一世を風靡した『ベストセラーコード』は、どちらかというとベストセラーの本文そのものを解析する、テキストマイニングと計量文献学の世界のお話でした。それに対してInkittは本文のみならず、それを読む読者の性質、本と読書の関係までも解析することで、読者が欲している嗜好を明らかにし、加えてその嗜好を本文に反映してしまおうとする、非常に野心的な取り組みを行っています。

こういうスタートアップが増えてくると、出版界も楽しくなりますね。今回はInkittのAIアルゴリズムを探しきれませんでしたが、どのように解析しているのか、引き続き調査したいと思います。 

ベストセラーコード 「売れる文章」を見きわめる驚異のアルゴリズム

ベストセラーコード 「売れる文章」を見きわめる驚異のアルゴリズム

 

 おまけ

せっかくなので、ユーザ登録してみました。興味のあるジャンルの登録作家の文章が読めるし、自分でも書ける(そしてそのフィードバックを会員からもらえる)ようになっています。一見すると、いわゆる本のSNS。でも、ここではユーザ同士のコミュニケーションが行われるのだけではなく、裏側ではAIが動いており、何がどのように読まれたのか、解析されているというわけです。

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図1 まずは興味の登録

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図2 様々な物語が並んでおり、、

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図3 実際に読むことができます

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図4 自分でも書けるようになってます

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図5 コミュニティが活性化するようなイベント企画もたくさん