読書的ニュース2017-08
Twitter(@doksyo_tek)につぶやいた#読書的ニュース、2017年8月分です。もう10月ですが。。それに、7月に書いていたこと、できてないなぁ。
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Prime Readingのススメ
はじめに
Amazonプライム会員向けに、読み放題プラン「Prime Reading」がサービスインしています(10/5~)。どちらかというと、ひっそりと始まったなーという感じがするのですが、みなさんの感覚はどうなのでしょうか。
内訳とdoksyo-tek的活用方法
10月28日(土)現在、890冊がPrime Readingの対象になっています。内訳は下図の左ペインのリストみたいな感じです。小説・ビジネス・趣味暮らしなど、各ジャンル100冊前後そろえてあるようです。
重複もあるようですが、おおよそ900冊がプライム会員であれば読み放題になっています。
Amazonは他にも、Kindle Unlimitedというサブスクリプションタイプの読み放題サービスも展開していますが、迷った時はこちらに比較が載っています。
選択の基準はいろいろかと思いますが、個人的には、Prime Readingかなと思っています。月額料金で読み放題というより、Prime Readingを使って好きな作家を発掘したり、手に取ることのなさそうなジャンルの本を読んでみたりして、購入前の目利きがしたい。そんな意味合いを持って接したいサービスだなと思っています。
Prime Readingで選んだ30冊!(10/28現在)
ということで、気軽な気持ちで「手に取ることがなさそうな」本を30冊ほど選んでみました。新しい本との出会いにつながれば、いいなぁ。
Novel Effect
以前「拡張する書籍」という投稿で、MIT Media LabのNarratariumというプロジェクトを紹介しました。
この仕組みはなかなか大掛かりで、実用レベルで実現するのは限定的かなぁと思っていたのですが、Amazonさん、やってくれました。
Amazon AlexaのNovel Effectというサービスは、読み聞かせの音声を認識し、物語内容に応じた音響効果を再生してくれるサービスだそうです。おお、まさにNarratariumコンセプトを踏襲してる!
さらに、Gizmodeの記事ではiOSでのアプリ提供だったようですが、さきほど見てみたらAndroid版も利用間近だそうです。
図1 Novel Effect
リンク先でメール登録すると、ベータ版テストメールが送られてきます。まだダウンロードできないようなので、利用可能になり次第、ここで続報をお伝えしようかと思っています。楽しみ。
図2 メールを眺めつつ、楽しみに待つ!
『戦略読書』定点観測 - 2017年8月
はじめに
下記は、今年の読書ポートフォリオ・マトリクス(以下、RPM)です。
昨年の実績値を参考に、年間200冊・読書時間460時間、マトリクスは横軸が「鍛錬⇔趣味」、縦軸が「基礎⇔応用」としています。
図1 2017年版のRPM
定点観測
以下、軸別に8月に読んだ本とその一言メモになります。
趣味-基礎
宇宙ゴミの収集が商売になる近未来の話。全4巻なのでまだ半分だが、熱くて面白い。次の一節なんて、なかなか哲学的で素敵。
この世に宇宙の一部じゃないものなんてないのか
オレですらつながっていて
それではじめて宇宙なのか
寄生獣の人が原作なので借りてみた。
まだレイリが何者でどんなメッセージがあるのかわからないけど、出来事の緻密なディテールと登場人物の心情の機微は読んでいてハラハラドキドキさせられる。面白い。
楽しい。作者自身が楽しんでいるのって、作品にじんでくる。今回も知らない世界のTipsをたくさん教えてもらいました。
次のフレーズ、好きだなぁ。”ぼくが思うに生肉の美味しさは人の本能に訴えかける何かがありますね
単に味が美味しい というより脳が喜びを感じているような気がします"
いぬやしき(7)【電子限定おまけ付き】 (イブニングコミックス)
- 作者: 奥浩哉
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2016/08/23
- メディア: Kindle版
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立川まんがぱーくで一気読み。ただし9巻まで。
文明を超越した技術は人びとに何をもたらすのか!? 老人と青年、正義と悪。明瞭な対比の中で分かりやすく描かれていく。うーん、早く最終巻読みたいなぁ。
うちは、容れ物も、中身も込みで、うち、なんやな(195ページ)
みんなの本当の気持ちって外出ししないし、してても気付かないこともあるし、この本に書かれているように、でもそれをうまく調節して(それは家族であっても)、中身も外見も磨いていくといいよって教えてくれた気がする。
やはり、この人の本は面白い。
趣味-応用
中村うさぎとマツコ・デラックスの両名が、それぞれの目線で語る人生論。生きるとは。幸せとは。
"私たちは「世界の中で居場所を確保できる自分」を「本当の自分」と呼んできただけの事。"
このフレーズ、的を得ている気がして、好きだなぁ。
2巻で見つけた名言。
"つまり図書館ってのは
自分で本を買って読むきっかけを与えてくれる所なんだよ図書館で本を知って
本屋で本を買う
図書館と本屋ってのは
そんな関係でありゃいいって俺は思うがね"
イランの歴史と、特に1980年代~のリアルな体験談をコミック化したもの。
黒色が多いのが外国マンガだなって感じで、最初読みにくかったが、慣れてくると内容がヘビーな分『ナニワ金融道』的な手法(あえて二次元ぽく描く)を用いてるのかもしれない。
図書館にて読書。言葉のコミュニケーションってやっぱり面白い!
紫外線通信(詳しくは本書でご確認ください)できたらいいなー。
中央線のゆるふわな散歩ポイント特集。眺めているだけで各駅に降りたって散歩したくなる。秋になったら中央線沿線を練り歩くのも、いいかも。
鍛錬-基礎
なし
鍛錬-応用
人工的な地下、自然の地下、そして過去の地下。ナショジオの写真力、かなり圧倒されます。これは一読、いや一見したほうがいいです。個人的には、人工的な地下にグッときたかな。
ヴァージニア・リー・バートン―『ちいさいおうち』の作者の素顔
- 作者: バーバラエルマン,Barbara Elleman,宮城正枝
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2004/03/19
- メディア: 大型本
- クリック: 10回
- この商品を含むブログ (3件) を見る
『ちいさなおうち』『いたずらきかんしゃちゅうちゅう』『せいめいのれきし』『マイク・マリガンとスチーム・ショベル』、、、大好きな作品の作者、ヴァージニア・リー・バートンの伝記。生い立ちから作品の創作過程、デザインの工夫まで、文字通り彼女の素顔がよく分かる一冊。
未完の『デザイン、どのように!』って本の原稿だけでも読んでみたい。
分析
まずは今月のRPMから。趣味-基礎の図書館が多いですが、ここには立川まんがぱーくで読んだマンガも含めています。RPMのグラフは、積み上げ縦棒が冊数、折れ線が読書時間です。
続いて、累積のRPM。じわじわと趣味-応用が伸びている、かも。そして、鍛錬-基礎はまったく読み進めていません。やはり「がんばって読むべきリスト」を作る必要がありそうです。
次に読む本
戦略読書のキモは、他人と差別化するために、他人と違う本を戦略的に読みこなしていくことになります。そのために考えた作戦が、組み合わせて自分が選ばない本を選んでみるというものでした(図4参照)。
この仕組みに則り、今月も本を選んでみました。
①キーワード(思い浮かんだ単語を書き出すだけ)
宇宙、ゴミ、侍、仕返し、ジビエ、生肉、老人、青年、対比、関西弁、人生論、居場所、図書館、本屋、翻訳、イラン、平面、おかん、言い回し、中央線
②トピック(順番に5つに分けただけ)
- 宇宙、生肉、人生論、イラン
- ゴミ、老人、居場所、平面
- 侍、青年、図書館、おかん
- 仕返し、対比、本屋、言い回し
- ジビエ、関西弁、翻訳、中央線
③選んだ本(各キーワードをAmazonでAND検索。ヒットしなかったら、後ろからキーワードを減らしていく)
竹光侍 コミック 全8巻完結セット (BIG SPIRITS COMICS SPECIAL)
- 作者: 松本大洋
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2010/04/28
- メディア: コミック
- この商品を含むブログを見る
今月は『脱出老人: フィリピン移住に最後の人生を賭ける日本人たち』にしたいと思います。
④次に読む本ストック
- 『卵子探しています: 世界の不妊・生殖医療現場を訪ねて』
- 『ローワンと魔法の地図 (リンの谷のローワン 1)』
- 『2020年人工知能時代 僕たちの幸せな働き方』
- 『君の膵臓をたべたい 』
- 『少年Hと少年A』
- 『脱出老人: フィリピン移住に最後の人生を賭ける日本人たち』
参考
- 戦略的に読書をするためにやったこと2016
- 『戦略読書』定点観測 - 2017年1月
- 『戦略読書』定点観測 - 2017年2月
- 『戦略読書』定点観測 - 2017年3月
- 『戦略読書』定点観測 - 2017年4月
- 『戦略読書』定点観測 - 2017年5月
- 『戦略読書』定点観測 - 2017年6月
- 『戦略読書』定点観測 - 2017年7月
文字組と挿絵にこだわった読書体験
はじめに
小説「キュー」、既に読まれた方もおられるのではないでしょうか。
「新しい読書体験を提供するプロジェクト」とあっては、気になって仕方ありません。今回はヤフーと新潮社がタッグを組み、ウェブに最適化した読書体験インタフェースを提供するという取り組みのようです。
文字組と挿絵
実際のインタフェースデザインはTakramが担当したとのこと。Takramのサイトにも「"q" project」として、紹介ページがありました。
このページによると、ウェブに最適化した新しい読書体験とは、今のところ、(1)スマホに特化し、目と手が疲れないインタフェースと、(2)1作品に読者の数だけ異なる挿絵が寄り添うインタフェース、とを併せ持つ電子書籍と言えそうです。
前者は、縦書き・縦スクロール・ページングを基本としたインタフェース。純文学伝統の縦書きを採用しつつ、親指の可動域を最小にする縦スクロール、目の疲れを抑える1ページ毎のスクロールというエフェクトが付いています。また、スクロールの前後では、文字が消えて出てくるしかけになっているそうで、それも目の負担軽減につながるとか。
サイトにアクセス。下の「続きから読む」から小説に入ります。
灰色の丸印が、下から上に動いて、どう動かすのか教えてくれます。
しっかり組まれており、下にスクロールすると、版面がまるごと動きます。その際、前の版面が一瞬消えて、次の版面がふわっと出てきます。
画面のどこかをタップすると、上側にナビゲーションバーが出てきます。左側で主な登場人物ページに、真ん中はヤフーサイトに(なぜだ。これはいらなくないか)、右側でトップに戻ります。
後者は、ユーザがスマホをタップした位置と時間に応じて、挿絵が自動的に挿入される機能のようです。ユーザのタップする条件は千差万別なので、その都度、生成される挿絵が変わるというのは、実験的パーソナライズになるかも。
doksyo-tekの場合の挿絵。動的な絵なので、試されたほうが確実に面白いです。
コンセプトも、しっかり解説。
また、今回は2機能のみの実装でしたが、いろいろと、文字通りタクらんでいるとのこと。楽しみです。
まとめと考察
「みんなの持ち物」がスマホになっていく中、文学作品も、紙の本に閉じずに、スマホという新しい媒介を使った作品表現に乗り出したかに見えます。そこでは、縦書きのような紙ならではのエッセンスを残しつつ、スクロールや個別挿絵のような、デジタルエフェクトが付加された楽しみ方ができるようになっています。
このような取り組みをみて思うことは、文字モノの敵(敵は言い過ぎ?)は限られた可処分時間において、同じスマホというプラットフォーム上の、動画サービスであり、音楽サービスであり、ソーシャルネットワークなのだと思います。激戦区において読書はどのように勝ち残っていけばいいか(敵とか勝ち負けとか、カゲキですかね。。)。
doksyo-tekは、「能動的な所作」がキーなのではないかと思っています。他のサービスは軒並み受動的に受け入れられるため、簡単に手を出せますが、深く没頭することも少ないのではないか、と思うのです。反面、能動的に文字を追いかける必要がある読書は、うまく乗れば、より集中が高まり、深く作品世界に入り込めるのではないか、と。
このプロジェクトは、機能の拡充を続けていく現在進行形のプロジェクトだとありました。より読者の集中力が高まる仕掛けがあれば、面白いなぁと思っています(それが何かは、じっくり考える必要がありますネ)。