読書的な何か。

読書と読書にまつわるテクノロジー、雑記など。

FUTUREBOOK CONFERENCE 2017

はじめに

イギリスの老舗・THE BOOKSELLERによるFUTUREBOOK CONFERENCE 2017。去年、このブログで取り上げようとしてすっかり忘れておりました。

2016年は「the BookTech Awards」でしたが、2017年は「BookTech Company of the Year 2017」となっていたようです。最終に残った6社、それぞれ面白いBook Techをお持ちなので、紹介してみようと思います。

2016年の記事はこちら。

doksyo-tek.hatenablog.com

紹介する6社のサマリ記事はこちら。

www.thebookseller.com

以下、doksyo-tekの意訳+感想です。間違いが含まれているかもしれませんので、ぜひリンク先の本家サイトも訪ねてみてください。

Authorfy

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子どもたちの読み書き能力を向上する教室を提供するサービス。プロの作家による創作に関するムービーを見て、その後でワークシート等、Authorfyが用意する活動を進めることで、読み書き能力が向上するよう設計されている。

このサービスは、識字率の向上のみならず、読者⇔作家のインタラクティブを通じて読書ファンを増やすという側面も兼ね備えている。

Time Traveler Tours

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歴史とポケモンGoマッシュアップしたようなサービス。サービス利用者はタイムトラベラーであり、彼らは歴史的な場所でスマホアプリを利用することで、歴史的な出来事に関するゲームやARを体験することができる。

このサービスは、電子書籍、オーディオブック、印刷物と共存する新しいタイプの参考書になりうる。

Sweek

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物語シェアサービス。自分で物語を書いて出版することも(売ることも)、誰かが書いた物語を読むことも(買うことも)、また、著者でもあり読者でもある参加者同士つながることもできる。

このサービスは、いわゆるソーシャル読書アプリだが、出版に関する全ての側面をモバイルだけで完結できるように設計されている。

Reading in Heels

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"intelligent, stylish modern women"向けのデジタルブックの詰め合わせサービス。月額制。文学、美容、ライフスタイル等に関連するデジタルブックが読めるとともに、レビューやコメントの共有、その他コンテンツを利用できる。

このサービスは、特定読者層をターゲットしているところがよい。詰め合わせるにしても、大枠の興味が同じで、かつある程度のボリュームがいる層を狙っている。鮮度の高い情報提供にも価値がありそう。

Bookship

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家族、友人、同僚等と自分の読書体験を共有できるソーシャル読書アプリ。特にインスタグラムやSnapchat等を使いこなす世代をターゲットにしており、気になるページのスクリーンショットを投稿したり、これから本を一緒に読もうと誘ったりする対話型インタフェースを備えている。

このサービスは、一言でまとめるならば、今風。読む行為は基本的に自分が本と向き合う内向的な行為だが、あえてコミュニケーション機能を設けることで、読書会的な要素を提供してくれる。

Last Seen Online

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没入型フィクションアプリ。行方不明の女の子とその家族に何が起こったのかを解明することが目的。7日間にわたって、テキスト・写真・ビデオメッセージを受け取り、それに基づいて真実を発見することを行う。

これは、読書というより、様々なメディアを総合的に使った体験型物語なのだと思う。こういうアプリ型コンテンツ、とても面白いけど、どうマネタイズするんだろう。

まとめ

 2016年のアワードは、データ連携するビジネスモデルと、書籍に付加価値を付けるビジネスモデルが主流でした。それに対して、2017年はもうずばり、ソーシャルリーディング。読むという個人的体験にコミュニケーション機能を加え、読書体験を共有するタイプのビジネスモデルが多く見られました。

この動き、日本ではあまり活発でない感じがします。ただ、もし「コミュニケーション」を「著者と読者をつなぐ仕組みとしてのソーシャルリーディング」と捉えれば、例えばDeNA/ドコモのエブリスタやヒナプロジェクトの小説家になろうなど、新人発掘・応援という文脈で広がりを見せており、また、これらはライツ販売というビジネスモデルが構築されつつあります。

いずれにせよ、データ連携、書籍に付加価値というベースに、ソーシャルというコミュニケーション要素が加わり、読書周辺の環境が整いつつあることが見てとれるのが、今年のアワードでした。

さてさて、来年はどう進化することやら。今から楽しみでなりません。

参考

併せてこんな本(と映画)も読んでおきたい!

コンテキストの時代―ウェアラブルがもたらす次の10年

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Reading the Comments: Likers, Haters, and Manipulators at the Bottom of the Web (MIT Press)

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