読書的な何か。

読書と読書にまつわるテクノロジー、雑記など。

メディアリボーン考

はじめに

2016年6月~7月、日経新聞に「メディアリボーン、デジタル時代の出版再生術」という特集記事が組まれていました。

ウェブを通じた情報発信が容易となった時代において、出版はデジタルとどう付き合い、活路を見いだしていくのか。良記事だったので、記事の簡単な紹介(詳しくは各記事をお読みください)をし、考察してみたいと思います。

記事の紹介

mx3.nikkei.com

  • NextPublishing社の取り組み
  • 同社の方針はデジタルファースト、ブックラスト
  • 編集、制作、流通をデジタルで実施。要望に応じて、紙でも作る方式
  • 楽天と組んで販路拡大。タイミングをつかむと売れる。多くて1万部と少部数だが、効率化で効果ありか

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  • 宝島社kippisの取り組み
  • 付録作りで培った目利き力を持つ編集者がブランドを立ち上げ、日用品にライセンス供与
  • 編集力とは、世界観を表現すること。近年はモノよりもコト。デザイナーを訪ねる旅、モノづくり体験教室等を企画している
  • 出版(編集力)をコトを生む源泉と再定義すれば、紙やデジタルではない、新領域へのピボットも可能か

mx3.nikkei.com

  • ハースト婦人画報社MediaOSの取り組み
  • 同社は読者に適切なタイミングで適切な内容を届けるためのCMSを活用
  • このCMSでは、PV、流入、SNSシェア、他媒体記事閲覧、デジタル広告マネタイズ(Shared Spaces)等、マーケティング調査が可能
  • ウェブ雑誌コスモポリタンにおいて、CMSを活用した結果、UU49%up、PV42%upという実績を作った
  • 原則は1日10本だが、臨機応変に編集力を持つ人が発信状況を変えていける仕組み

考察

紹介されたいずれの会社も、本が売れない、という大きなうねりの中、なんとか出版社の強みを武器にしようと取り組んでいる様子がみてとれました。

これらの記事を通じて、doksyo-tekが感じたキーワードは3点です。

つまり、(A)編集、(B)変換、(C)蓄積、です。一言にするならば、膨大な情報(データ、に近いかもしれません)から意味を見いだし、読者に届く情報に変換し、それをいつでも引き出せるように蓄える、ということです。この3点を着実に実施することで、まさにメディアリボーンが可能なのではないかと思います。

(A)編集

ここでもっとも重要になってくる技術は検索技術です。Google検索のみならず、図書館や、図書館等で使える有償データベースなども駆使し、多様な情報源から意味のある情報を紡ぎ出す技術が求められると思います。

(B)変換

ここで必要になる技術はフォーマット変換技術です。ワンソースをマルチユースするのみならず、例えば機械学習によるラベリング、SNSクラウド(群衆)が付けるハッシュタグ解析等を通じた画像⇔テキストの変換など、紡いだ情報を思い通りの形に変換できる技術が求められると思います。

(C)集積

ここは、日々のデータベースであると共に、後世に知識を伝えるデジタルアーカイブのような役割も持っているかもしれません。近年はバックエンドの仕組みはAWS等のクラウドに任せることが多くなってきましたが、時間軸という活用視点を手に入れるためには、10年、100年、1000年と保ち続ける、長期保存・活用の視点も必要かと思います。

まとめ

(A)~(C)が全てだとは思いませんが、逆に(A)~(C)の仕組みが活性化する、新しい読書技術について考えてみるのも面白いかもしれません(結局、読む対象となるコンテンツは、(A)~(C)を通じて生まれてこなければ読めません。だから、読む側から仕組みを活性化する技術があってもいい、でしょ??)。