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読書的な何か。

読書と読書にまつわるテクノロジー、雑記など。

書評『読書進化論』

著者は評論家として有名な勝間和代さんです。今から10年近く前の本(2008年刊)ですが、『読書進化論』というタイトルに惹かれ、読んでみました。

概要

本書は大きく4部構成になっています。まず(1)「読書で人が進化する」とは何かについて述べられています。次に(2)読む、(3)書く、(4)売るの視点でそれぞれ当事者はどう進化すべきか、考察が加えられています。また、巻末には勝間さんが影響を受けた作家リストや書籍中の参考文献リストが付いています。

読書で人が進化するとは

勝間さんが考える読書で人が進化する本質とは何か。それは「疑似体験」ができること。本は、他者が試行錯誤して得た知識や経験を、コンパクトに一通り学べるよう設計されたメディアなのだ、ということです。また、他のメディアと比べ、集中・沈黙状態を要する読書は、知識定着の観点からも優れているのかもしれません。

読む

疑似体験を「読む」ために、読者はどう進化していくべきか、論じています。ここで一貫しているのは進化は突然やってこないということ。

勝間さんはフォトリーディングと呼ばれる速読法を広めていることもあり、早く読む術ばかり注目されがちですが、その実、「読む」に近道なしのような地道な手法を提唱しています。

つまり、

  • 文書構造を把握する
  • わかっていることからちょっとずれているくらいが面白い
  • 同時に同じテーマを併読する
  • 速読は、自分の知っている部分は読み飛ばしてもよいが、それがないなら最初からきちんと読む

といった具合に、読書は丁寧に5冊、10冊、20冊と読み重ねることで、少しずつ進化させていくものだと捉えています。

書く

「書く」についても、スタンスは「読む」と同じで、「進化とは、突然変異ではなく、徐々に積み重ねられた技術や労力が一定水準を超えたときに始まるものです(p.150)」。と述べています。

と言うものの、コツはあるようで、読みやすく・分かりやすく書くコツを4点ほど挙げていました。

  • 技術①「自分の事例」「アンソロジー形式」を利用して親しみを持たせる
  • 技術②「役に立つフレーズ」を必ず入れ、読書だけに体験を閉じない
  • 技術③「共通体験」や「流通していることば」を使って行動を促す
  • 技術④「コンテンツ力」と「編集力」で進化していく

本書ではこれらを駆使することで、豊富な経験談(いい意味での「与太話」)が形成されていく旨が述べられています。

売る

「読む」や「書く」が人間の内面の進化だとすると、「売る」は外面、他者とつながるための進化だと言えるかもしれません。

勝間さんは、出版メディアはマーケティングの4Pでいうところの、流通チャネル(Place)と広報宣伝(Promotion)が弱いと指摘しています。

確かに、日用雑貨や食料品で普通に行われているマーケティングの手法を、そのまま本に適用するだけで、他者へのリーチは大幅に変わってくる気がします。そして、このあたりは、ウェブ上の新しい技術やサービスが補完してくれる部分なのかもしれません。

所感

この本はタイトル副題に「人はウェブで変わるのか。本はウェブに負けたのか」とありますが、思ったほどウェブの話が出てこなかった気がします。

しかしながら、この本が出版されてから約10年、ウェブは電子出版やコミュニケーション技術など、目を見張る進化を遂げています。それに伴い、本質(=疑似体験)は変わらないものの、読書を取り巻く環境(読む・書く・売る共に)は大幅に進化しています。10年前と比較して、変わった点/変わらなかった点を並べて検証、考察してみるのも面白いかと思います。

その意味で、ご興味のある方は、ぜひ手にして実際読まれることをおススメします。

最後に、彼女の読書に対する姿勢を端的に示した一節のご紹介。

p22
よく、「本を読め、本を読め」といいますが、「読んだ本の成果は仕事や生活で活用しなければならない」と、私はずっと思ってきました。

なぜ読むのか。その根源をシンプルに述べている気がします。読書=疑似体験⇒活用。この心地よいポジティブさこそ、普遍的なものなのかもしれません。

▼勝間 和代著「読書進化論‾人はウェブで変わるのか。本はウェブに負けたのか‾ (小学館101新書)」(小学館)
4098250012

おまけ

本書の参考文献からdoksyo-tekが読んでみたい本を数点ピックアップしてみました。

▼筒井 康隆著「七瀬ふたたび (新潮文庫)」(新潮社)
B0099FM3RA

▼P F ドラッカー,上田 惇生著「ネクスト・ソサエティ」(ダイヤモンド社)
B0081M7XH2

▼中島 義道著「ひとを〈嫌う〉ということ (角川文庫)」(KADOKAWA / 角川書店)
B00IADVP0I

▼J・モーティマー・アドラー,V・チャールズ・ドーレン,外山 滋比古,槇 未知子著「本を読む本 (講談社学術文庫)」(講談社)
4061592998

▼W・チャン・キム,レネ・モボルニュ,入山 章栄,有賀 裕子著「[新版]ブルー・オーシャン戦略」(ダイヤモンド社)
B014OX5WB0

▼久恒 啓一著「図で考えれば文章がうまくなる―「図解文章法」のすすめ」(PHP研究所)
4569641385