書評『読書で賢く生きる。』
漆原直行、中川淳一郎、山本一郎の3氏による、ビジネス書に的を絞った読書論です。皆さん非常に尖った論客なので、歯に衣着せぬ切り込みぶりが爽快な一冊でもあります。
概要
本はお三方個別の読書論と、座談会形式の議論がサンドイッチになって構成されており、読み進めるにつれてビジネス書の世界が浮き彫りになっていきます。随所におススメのビジネス書が紹介されていますので、ミニマムでビジネス書の真髄に触れることもできますし、マックスで多面的にビジネス書を捉えることもできます。
以下、各氏の読書論を意訳してみました。
中川氏の読書論
読む本のタイプとして2種類提示しています。①共通言語になるもの、②繰り返し読むもの、です。前者は他者との会話を円滑に進めるための潤滑油的な情報として使うものであり、後者は自分にとって血肉となるもの、です。
漆原氏の読書論
基本姿勢は読みたいものを、読みたいように、読みたいだけ読む。ただ、ポイントが2つあります。1つは感じたことを言語化するためにツッコミながら読む。もう1つは要点を抑えるために周辺知識を意識して読む、です。
山本氏の読書論
本は、思考し、考察し、知を体系化するための「きっかけ」。きっかけを得るために、①時間による感じ方の変化と、②実体験との関連、という2点を意識しつつ、労を厭わずに「導きとなる本」を探したほうがよい、です。
座談会
自己啓発本のロジック・パターンに関する話や、ビジネス本との向き合い方・得られるもの、等々、多岐にわたるトピックスが具体的なビジネス本を例に語られています。会話形式なので実際に座談会会場でお話を聞いているような感覚になりました。
所感
なんというか、嘘偽りのない、本音の話に心が惹かれました。みなさんビジネス書に批判的思考を持って接していると思います。ここで言う批判はもちろん「こんなものダメだ」という類の話ではありません。むしろ、ビジネス書を丁寧に眺め、分析し、そして導いた論考であり、学術研究における考察のように感じました。そして、本書の冒頭に記されている次の一文こそ、この本の一番のメッセージなのではないか、と思います。
(p4)
要するに、読書は「自分にはまだまだ知らないことがたくさんあるなぁ」ということに気づくための行為(無知の知)であり、より善き人生を送ることに役立つバランス感覚を獲得するための営みであるということができるでしょう。
▼中川 淳一郎,漆原 直行,山本 一郎著「読書で賢く生きる。(ベスト新書)」(ベストセラーズ)
オマケ
補講的な情報として、お三方の連載がCakesでも読めます。有料です。
以下は、本書を通じて、読んでみたくなった本の一部です。別途進めている戦略読書でもピックアップしてみたものです。なかなか読めていませんが。
▼スティーブン・R・コヴィー,フランクリン・コヴィー・ジャパン著「完訳 7つの習慣 人格主義の回復」(キングベアー出版)
▼ナポレオン ヒル,Napoleon Hill,田中 孝顕著「思考は現実化する―アクション・マニュアル、索引つき」(きこ書房)
▼デール カーネギー,Dale Carnegie,山口 博著「人を動かす 新装版」(創元社)
▼松下 幸之助著「商売心得帖/経営心得帖 (PHPビジネス新書 松下幸之助ライブラリー)」(PHP研究所)
▼稲盛 和夫著「アメーバ経営 (日経ビジネス人文庫)」(日本経済新聞出版社)
▼ジョン・P・コッター,ホルガー・ラスゲバー,野村 辰寿,藤原 和博著「カモメになったペンギン」(ダイヤモンド社)
そういえば、こんな本も息抜きになっていいかな。個人的に大好きな?ビジネス書です。