読書的な何か。

読書と読書にまつわるテクノロジー、雑記など。

紙とディスプレイ -表示媒体の違いにおける読みやすさ(7)

はじめに

これまでの経緯は以下になります。

下記論文のDigital reading(デジタル読書)に関する研究トピックス、今回は最後のトピック「Technological advancement and traditional attachment」(技術の進歩と伝統的な愛着)です。

Ziming Liu: "Digital reading: An Overview", Chinese Journal of Library and Information Science (English edition), 5.1, p.85-94(2012)

 Technological advancement and traditional attachment(技術の進歩と伝統的な愛着)

技術の進歩
  • タブレットのような端末での読書は、タッチスクリーン等、手や指を用いた新しい設計に影響される
  • 新技術はスクリーン上で長時間の読書活動を可能にする
  • 新しいデバイスが読書習慣に①どのような影響を及ぼすか、②どう進化していくのか、興味深い研究エリアである
伝統的な愛着
  • 多くの人々は、紙メディアに愛着を持つ(ページ番号、所有、匂いなど)
  • 電子教科書で最も扱いにくい点は、教室で学生に同じ部分を指し示すこと(注:文字サイズやディスプレイサイズが可変のため。裏を返せば、紙ではそれができる)
  • フランスでは半数近くの学生が紙の本の匂いがキー要素と捉えており、次世代のオンライン読者もそれを受け入れると考えている
筆者によるまとめ
  • 新しい世代の読者※は、デジタル読書に対してまったく異なる経験を持っている可能性がある(※チャット、ブログ、SNS等に最初から親しんでいる子どもたち)
  • 急激な技術の進展、社会の変化に対して、読書はどう進化していくのか(新しいデバイス/オンライン読書/読書習慣等)継続的な研究が必要
このトピックスの引用文献

Hillesund, Terje, "Digital humanities: Why worry about reading?", Information Structure, infrastracture and metadata, p128-161(2011).

Jeffrey R. Young, "This Could Be the Year of E-Textbooks, if Students Accept Them", The Chronicle of Higher Education(2009).

Robert Darnton, "The Case for Books: Past, Present, and Future", New York, Public Affairs, p256(2009).

簡単な所感

最後のトピックは、技術と伝統の比較。要するに、従来の読書に対し、技術がもたらす変化について考えていこう、という主張です。

では、なぜ変化を考える必要があるのか。みんなが実感していることだと思いますが、これまで「紙」という枠組みの中で進化してきた読書が、「ディスプレイ」という、未知のモノに置き換わろうとしているからです。そこでは、本の取り扱いがいろいろと異なってきています。紙の本と電子デバイスという入れ物の違い、紙とディスプレイという操作の違い、オフラインとオンラインという内容に変化を加えられるかどうかの違い、など、諸々です。

今回のトピックスでは、技術の進歩と伝統的な愛着を対比しながら現状が述べられていますが、紙がディスプレイに置き換わるとどういう変化があるのか、考察はありません(今後の研究課題になっています)。次回、この部分についてこれまでの(1)~(7)の総括とdoksyo-tekなりの考察をしてみたいと思います。

ついにまとめ! なんか、途中から論文紹介みたいになったけど、長かったなぁ。

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