読書的な何か。

読書と読書にまつわるテクノロジー、雑記など。

読書術本の読書術を解析する(2)

前回の続きです。読書術本のAmazonレビューデータを使って、テキスト解析してみた、というお話です(対象データセットや解析手法については、こちら)。

解析結果と考察

以下、各解析結果について、考察してみようと思います。

(1)語の関係性 共起ネットワーク

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まず、共起ネットワークですが、今回も語の共起関係と、コミュニティの結びつき指標(モジュラリティ)による図を作ってみました。図では、「本」を中心に放射状にいくつかのサブカテゴリが散見されます。

眺めてみると、以下のような分類ができそうです。

  • 中心:読書、内容、本書、本、ビジネス、得る、書く、など
  • サブカテゴリ1:考える、感じる、読み方、時間、必要、参考、など(「読む」「内容」「本」などの派生)
  • サブカテゴリ2:情報、知識、など(「得る」の派生)
  • サブカテゴリ3:アウトプット、レビュー、など(「書く」の派生)
  • サブカテゴリ4:投資、効率、メモ、多読、レバレッジ、など(「ビジネス」の派生)

この分類は、中心に「読書」を据え、「読む」「得る」「書く」「ビジネス」へと展開されている様が見て取れます。

例えば、読むという側面は、どう感じて、どう考えたかといった内的アクティビティに向けたものであることがわかります(読むに関しては、内容本書といったキーワードが重層的に絡まっています)。また、内的なアクティビティは情報知識の取得という形で具体化され、書くという側面においてレビューアウトプットといった外的アクティビティへとつながります。さらに、より具体的にビジネスに応用するという視点で、多読メモといった手法を通じて、投資対象としての効率的に取り扱おうとしています。

(2)語の分類 階層的クラスタ分析

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次に、階層的クラスタ分析を見てみます。仮に分類を色別に上から①、②、③、、、⑨としてみますと、大きく3つのクラスタに分類できそうです。つまり、

(A)読書という基本的行為クラスタ・・・①

ここは本を読むという行為の基本的なキーワードで占められています。対象者としての著者自分、対象物としての本書内容、行為としての読書読む、考えとしての言う思う書くです。当たり前のことかもしれませんが、改めて分類すると読書の基本構成が見て取れるかと思います。

(B)インプットとしての読書クラスタ・・・②~⑥

元々レバレッジとは少ない投資で多くのリターンが期待できるという金融用語ですが、転じて効率的な読書リーディングを通じて、多くの情報知識教養を得ること、と言えそうです。「レバレッジリーディング」という本に影響を受けているのかもしれませんが、ローコストハイパフォーマンスというビジネスの一形態にも通じる気がします。

(C)アウトプットとしての読書クラスタ・・・⑦~⑨

3つ目のクラスタは、ハイパフォーマンスの部分、つまり得たものをどう表出させるか、というクラスタです。アウトプットするために読者たくさん文章から言葉を使って主張を形作っていくのだと思われます。ここにはタイトル参考価値面白い等のキーワードも含まれており、多面的な読書アプトプットが表現されているのかもしれない、と思いました。

(3)語の分類 多次元尺度構成法

ここまでの解析結果は、読書を読む→得る→書く→ビジネス応用、という流れで捉えていたかと思います(やや強引かな・・・)。

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それに対して、多次元尺度のマッピングでは、中心には本とビジネスが密接に結び付くクラスタがあり、その周辺を「本の種類・多少」「内容・知識」「価値・おもしろさや学び」という各クラスタがある構成になっています。中心は「読む」「得る」「書く」という一連の読書作業に属するキーワードを内包しているため、バリエーションやボリューム、おもしろさや学びといった気づきはそれを促進させるためのアクセラレータみたいな役割なのではないでしょうか。そして、一連の読書作業が洗練されてくると、それはほぼビジネスのようなものだ、と読み解くのは言いすぎでしょうか。

(4)語の分類 自己組織化マップ

うーんと、、前回もイマイチだったのですが、自己組織化マップは自分には解釈が難しく、うまく説明できません。。学習を増やせばよいというわけでもなさそうです。そもそも自己組織化について原理をあまり理解していないことが解釈の要因だと思っています。これについては勉強してもう一度出直し、かな。

一応、1000回、3000回、5000回(前回のポストでは3000回までしかやってませんでしたが、一応5000回までやってみた)の自己組織化マップを載せてみます。

まずは1000回。

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次が3000回。

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そしてこれが5000回。

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まとめ

読書術本の読書術は、全体を俯瞰するために教養⇔ノウハウ/乱読⇔精読というマトリクスで紹介されていました。

  1. 教養:知識は古典の名著にあり
  2. ノウハウ:とにかく即戦力・実用
  3. 乱読:リベラルアーツ(一般的な教養)を得るためにとにかくたくさん読む
  4. 精読:一冊の本をいかに深く読み解くか

解析から見えてきたことは、読書術本で語られていることは総じて「読むことで/何を得るのか/それをどうアウトプットし/どうビジネス等の活動に活かすのか」ということのようです。

つまり、マトリクスが示すアプローチはどれも間違いではない。どの方向から読み進めても、場合によってはハイブリッドに進めても、行きつく先は同じになる、と考えるほうが自然なのかもしれません。

もちろん、今回はレビューデータを対象としたため、読者の主観に基づくデータを用いています。したがって、本の主張が正確に反映されたデータとは言えません。実際の書籍データでも同様のことをやってみると、さらには、レビューデータと比較してみると、より面白い実験結果が得られるかもしれません。

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