読書的な何か。

読書と読書にまつわるテクノロジー、雑記など。

Spooky Tales

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年末年始に、何気なく買ったレゴ人形。Spooky boyという変わった人形が当たったのですが(袋に入っていて、どんな人形が出るかわからない)、『Spooky Tales』と書かれた黒い本が一緒に付いていました。

brickset.com

www.lego.com

Spooky Tales。直訳すると『気味の悪い物語』。うわー。人形も気味悪い感じだけど、本もおどろおどろしいなぁ。。と思ったのですが、eBayで見てみると、なんと本のパーツだけで6.99USドル! 日本円にしてざっと821円(2017/1/9現在)! けっこうな高値でやり取りされる希少本なようです(笑)。

www.ebay.com

先日、GIGAZINEで、中世時代には自分で書いた本を守るため、本に呪いをかける方法があったという記事を読みました。当時の本は手書きでコピーを作る貴重なものだったため、本の最初と最後に、盗人を脅迫するような、「呪い文」がついていたそうです。

gigazine.net

例えばこんなやつ。

May the sword of anathema slay If anyone steals this book away.

もし何者かがこの本を盗み去ったら、その人は破門の剣で殺されることだろう

ひぇー。これこそ、まさに「Spooky Tales」ですね。。Spooky boyのSpooky Talesにも同様の文章がついているかもしれません。

そうなってくると、がぜん、Spooky Tales本体が読みたくなってくるなぁ。どんな内容なんでしょうかね。

書評『頭は「本の読み方」で磨かれる』

はじめに

テレビでもおなじみの茂木健一郎さんによる読書論です。茂木さんは脳科学者ですが、本書は脳科学の知見というより、脳科学に裏打ちされた、ご本人の読書に対する姿勢や考え方、読むためのテクニック等がまとめられている本かと思いました。

内容は5章構成になっており、doksyo-tek的な意訳では、

  1. 読書のメリット
  2. 読書をするとどんな人になれるか
  3. 本の探し方
  4. 本からどう「得る」のか
  5. 厳選本10冊の紹介

についてまとめられています。また、巻末には各章で取り上げた本がリスト化されており、おススメ本が一目でわかるようになっています。

どの章もわかりやすく、かつ刺激的なのですが、詳細は本で確認していただくとして、ここではdoksyo-tekが気に入った3つのフレーズをご紹介します。

その1

「読書のメリット」について述べている部分から。

p27
科学にかぎらず、知性というのは「どれだけたくさんの人の立場で考えられるか」ということだとぼくは思います。それは「読む」ことによって養われる力なのであり、知的活動の現場で、実際に重要視されているのが、積極的な読書なのです。

相手のことをおもんぱかるって、人と人が関わっていく社会においては、最も大事にすべき、基本だと思うんです。そんな大事なことの基礎力は読書を通じて醸成することができるのだと。やはり読書は素晴らしい!

その2

「読書をするとどんな人になれるか」から。実用書、ビジネス書に関する話において、

p95
エッセンスとして抽出されたものは、確かに至宝です。けれどもそこからさらに進んで、自分でそれを体系化し、みずからの足でビジネス書に書かれているような成功をたどるためには、やはり具体的な「一の積み重ね」がいるのです。

ただ本に書かれているテクニックを模倣するだけではなく、「自分が人生のつくり手になるのだ」という意識で本を読んでみてください。

千里の道も一歩から。自分の血肉とするために、ショートカットは存在しません。一歩一歩、丁寧にやっていくのがいい。そして、特に後半の言葉が大事だと思う。読書は疑似体験ですが、それを真似するだけではない。自分のモノにする、自分事として捉える、自分との対比で考える。そうする意識がより血肉化を促進してくれるはずです。

その3

「本からどう「得る」のか」より。文章の好き嫌いでなく、客観的に見て優れているか否か。そんな見方について、

p188
本でもそれと同じように、「自分の好みはさておき、この人の文章は、なぜ多くの人に評価されているのか」その理由が俯瞰的にわかるようになったとき、真の"読書通"の目が備わったと言えるようになるのであって、そのとき自分の言葉も人を動かす説得力を持ってくるのです。

同感! 自分の好みや感覚で評価するのは楽ですが(ってこの3つを選んだのも、まさに好みや感覚なのですが)、やはり多くの人に評価される言葉や文章には、それなりの客観的理由が存在するのだと思います。そこまで曇りなき眼で見定めることができれば、それは読書通と自負していいのかもしれません。

オマケ

茂木流・速読のポイント(195ページ参照)。今度速読についてまとめて考察しようと思っています。その布石です。

  1. 「もくじ」を見て全体を俯瞰する
  2. 「これはちょっとおもしろそう」という見出しがあれば、その項目は重点的に読む
  3. 全体をパラパラめくって、「だいたいこんなことが書かれている」というポイントを把握する

所感

茂木さんの読書に対する考え方がコンパクトに、わかりやすく詰め込まれた一冊だったかと思います。各章末には、まとめとして5個程度の文で章の内容がリスト化しています。本当に時間がなければ、ここだけ拾い読みしてもエッセンスは伝わるのかもしれません。以下、読書リストから読んでみたいなと思った5冊をご紹介です。実際のリストは、ぜひ実際の本でご確認を~。

サラバ! 上

サラバ! 上

 
サラバ! 下

サラバ! 下

 
皇帝の新しい心―コンピュータ・心・物理法則

皇帝の新しい心―コンピュータ・心・物理法則

 
奇跡のリンゴ―「絶対不可能」を覆した農家 木村秋則の記録 (幻冬舎文庫)

奇跡のリンゴ―「絶対不可能」を覆した農家 木村秋則の記録 (幻冬舎文庫)

 
宇宙からの帰還 (中公文庫)

宇宙からの帰還 (中公文庫)

 
イワン・デニーソヴィチの一日 (新潮文庫)

イワン・デニーソヴィチの一日 (新潮文庫)

 

ラーメンズ『home』より「読書対決」

ラーメンズが、復興支援を目的としてコント100本をYouTubeにアップしたようです。

rocketnews24.com

素晴らしい試みですね!

ラーメンズと言えば、笑いと演劇の融合というか、オシャレお笑い要素が多分にあるかと思いますが(←かなりdoksyo-tekの独断と偏見が含まれます)、やはり本ブログで紹介すべきは、「読書対決」かと思います。

www.youtube.com

news篇もある!

www.youtube.com

何度見ても面白い。今見返すと、ビブリオバトルに笑いのセンスをふんだんに盛り込んだ形式のよう。ビブリオバトルも、無意識に影響を受けているのかもしれません。

ぜひ、たくさんラーメンズの映像を見て、復興支援しちゃいましょう!

写経(室生犀星の詩)

NDLのデジタルコレクション、充実してるんですね。ネット利用可能な図書だけで、35万冊を超えている! それに出版当時のままで読める(古い本は眺めるに近い)のっていいですね。

つらつらと眺めていて見つけたもの。「ふるさとは遠きにありて思ふもの」でおなじみ、室生犀星の詩です。様々な顔を見せる読書に関する、2編。写経したくなって、しちゃいました。

国立国会図書館デジタルコレクション - 第二愛の詩集(54コマ目)

『本』

本をよむならいまだ
新しい頁をきりはなつとき
紙の花粉は匂ひよく立つ
そとの賑やかな新緑まで
ペエジにとぢこめられてゐるやうだ
本は美しい信愛をもって私を囲んでゐる

 

国立国会図書館デジタルコレクション - 愛の詩集 : 室生犀星第一詩集(80コマ目)

『燭の下に人あり、本を読めり』

本を読んでゐると又雨が降り出した
毎晩のやうに重い雨戸が
閉した窓を叩いてゐる
濡れてしめつたそととは反対に
僕の室では一本の蝋燭がともれ
立派な美しい垂れとしほとを見せたカーテン
を下ろし

カーテンの裾のはうに卓があり
僕は感涙しながら本をよんでゐる
この恐ろしい物語りの中に
世にもやさしい一人の女性がゐて
人をあやめた不幸な男のために
声たかくヨハネ伝をよんで聞かしてゐる
頭を垂れた男の魂と
不遇な彼女の魂とはつれ立つて
今平和なすすりなきをしてゐる
ここまで読んで僕はふいと耳を立てた

ああ とぎれとぎれな雨のふる中で
だいぶ虫の啼く声が減つたやうだ
おとろへはてたあの声
毎夜のごとくかれらの美しい声により
また慰さめられて本を読み
そしてゐる間にもう肌さむい頃になつた
誰人とも会はず
清明な孤独に住み込んで
おお もう秋おそい頃になつたのであつた
自分は再た窓をとざして

しづかな雨をきいて
悲しい書物のペエジを剪りはじめた

 

「読んで理解する」とは何か(1)

はじめに

読書とは何か? 辞書によれば「本を読むこと」です。

では、読むとは? 同様に辞書によれば、8つほどの意味があるようですが、読書の文脈では、②の「文字・文章などの表す意味を理解する」かと思います。

では、理解するとは? やはり辞書によれば、「わかること、納得すること、のみこむこと」。人によって違いはあるのでしょうが、心理学的には読み手の認知プロセスのことを指すようです。

読んで理解するための認知プロセス、丁寧に言うと「読解時に読み手が行う手続き及び思考で、理解プロセスに影響を与える任意の認知プロセス」のことを、読解方略と呼ぶそうです。

今回は、この読解方略について、上記定義を示したサマリー論文があったので、勉強もかねてまとめてみます。

犬塚美輪, "読解方略の指導", 教育心理学年報, Vol.52, p.162-172(2013).

以下、doksyo-tekの理解の下でまとめていますので、解釈が間違えているかもしれません。あくまでメモとしてお考えください!

この論文が対象とする文書

日本語で書かれたもの。物語文ではなく、説明文(概念やものごとを説明する文)や、論説文(特定の事柄についての意見が書かれた文)であること。

読解方略の定義

読解とは、読んで理解すること。方略とは、理解に影響を及ぼす手続きのこと。著者の言葉で言えば、読解方略とは「読解時に読み手が行う手続き及び思考で、理解プロセスに影響を与える任意の認知プロセス」である。

Weinstein, C. E., & Mayer, R. E. (1986). The teaching of learning strategies. In M. C. Wittrock (Ed.), Handbook of Research on Teaching (3rd ed.) (pp.315-327). New York, Macmillan.

Alexander, P. A., & Jetton, T. L. (2000). Learning from text : A multidimensional and developmental perspective. In M. L. Kamil, P. B. Mosenthal, P. D. Pearson, and R. Barr, (Eds.) Handbook of Reading Research : Volume 3 (pp.285-310). Mahwah, NJ : Lawrence Erlbaum Associates.

モデル

読解方略を説明するいくつかのモデルがある。例えば、以下の2つ。

理解の深さに関する3因子(犬塚モデル)

理解の程度によって、どういう手続きをしているかを示したもの。言い換えや読み速度を落としたりするのが浅め、自分が知っている事柄と結び付けて読むのが深め。

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図1 3因子モデル

犬塚美輪 (2002). 説明文における読解方略の構造 教育心理学研究, 50, 152-162.

犬塚美輪 (2009).  メタ記憶と教育 第9章 清水寛之(編)メタ記憶―記憶のモニタリングとコントロール― 北大路書房

読解方略の4面モデル(McNamara, Ozuru, Best, O'Reilly)

メタ認知(認知を認知すること)が中心にあるとして、①まず読む状態を作り、②字面を追い、③文の構成を大掴みし、④内容を理解する、といった4つの側面を持つモデル。

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図2 4面モデル

McNamara, D. S., Ozuru, Y., Best, R., & O'Reilly, T. (2007). The 4-pronged comprehension strategy framework. In D. S. McNamara (Ed.), Reading comprehension strategies : Theories, Interventions, and Technologies (pp. 465-491). New York : Lawrence Erlbaum Associates.

効果

手続きが示されると、読解が促進される。また、手続きの違いによって効果も異なる。例えば、要約文の作成という手続きは、文章内容の正確な理解という効果をもたらす。また、テーマに関する知識を増やす/豊かにするという手続きは、文章内容をより深く理解するという効果をもたらす。

秋田喜代美 (1988). 質問作りが説明文の理解に及ぼす効果 教育心理学研究, 36, 307-315.

Chemielewski, T. L., & Dansereau, D. F. (1998). Enhancing the recall of text : Knowledge mapping training promotes implicit transfer. Journal of Educational Psychology, 90, 407-413.

石田 潤・桐木建始・岡 直樹・森 敏昭 (1982). 文章理解における要約作業の機能 教育心理学研究, 30, 322-329.

笠原正洋 (1991). 読解過程での自己質問生成が説明文の理解・記憶に及ぼす影響 認知・体験過程研究, 1, 77-108.

Martin, V. L., & Pressley, M. (1991). Elaborative-interrogation effects depend on the nature of question. Journal of Educational Psychology, 83, 113-119.

Spires, H. A., & Donley, J. (1998). Prior knowledge activation : Inducing engagement with informational texts. Journal of Educational Psychology, 90, 249-260.

所感

読んで理解するとは何か。その認知プロセスを示すサマリー論文があったので、本記事では、doksyo-tekの理解も兼ねてまとめています。

読解方略とは、人が本を読むという行為を通じて、どうやって本に書かれている内容を獲得するのかというプロセスを研究する領域のようです。いくつかのモデルが提案されており、またその効果も様々な視点で検証されています。

3因子モデルなどを眺めていると、読書術などで見られる方法論などは、こういうモデルに裏打ちされているのかもしれないと思いました(直接的にモデルを意識していなくとも、経験則が実はモデルに落とし込めるものだった、ということかもしれませんが)。

さて、論文ではこの後、手続きはどう示されるべきか(教示されるべきか)といったいくつかの指導パターンや、どう実践すべきかという実例、また、新たな課題として①紙に代わるデバイス、②映像音声等を用いたマルチメディアコンテンツ(マルチメディアって最近言わなくなった気がする)、③ハイパーリンク等のウェブ要素、などに触れています。このあたりは、この次の記事でまとめてみたいと思います。