書評『挑戦する図書館』
はじめに
「図書館、がんばってる!」がわかる一冊です。
著者は図書館研究の第一人者である大串夏身氏。研究者らしく、明確に情報社会における図書館の役割と課題を述べています。読書活動の供給源であり、かつ読書環境でもある図書館、どんなことになっているのでしょうか。
概要
場としての図書館が、情報通信という道具を得て、どのように地域、まち、人を接続していくのか。本書は全てこの視点で書かれていると思います。そして、接続へのチャレンジこそ、図書館の未来につながるのだと。
場
図書館は、人の生活や仕事、地域課題を話し合い、知恵を出し合うことを支援する場所だそうです。既に、キャリア形成支援/就職支援/地域産業支援/ビジネス支援/農業支援/行政支援など、驚くほど多岐にわたる支援が行われているそうです。本書では支援内容を理解するため、多数の具体的な事例が紹介されています。
情報通信
知恵の出し合いを支援するためには、インプットとしての情報が必要です。図書館では、置かれている本や各種紙資料に加え、デジタル、つまりネットワークを介して有料データベース等からも情報を得ることができます。
また、近年では、専門司書への相談・回答サービスがナビゲータやコンシェルジュ的な役割を持つとして注目されているようです。このサービス、Chatbotと絡めて捉えると面白そうだなと思いました。
地域・まち・人を接続
知恵の出し合いには、情報のインプットのみならず、人々が交流を深めていくこともとても大事な要素です。なぜなら、人との対話の中にこそ、有益な情報があふれているからです。そして、その手助けとして、図書館のサービスがあります。本棚のつくり、建物や部屋の構成、あるいは映画鑑賞や読み聞かせ等のイベント。一見するとアドホックに見える活動も、全て知恵の出し合い支援として捉えると、その活動は有機的につながっており、思いのほか広く深いものに見えてきます。
所感
元・中の人が描く図書館論は、地域を大切にする姿勢にあふれたものでした。そして、図書館を未来に導くのは、相談・回答サービス等に代表される、知恵の出し合いの潤滑油となる司書なのではないかと思いました。司書に求められる本質は、人々の知恵を引き出すために、リアルとデジタルの情報を状況に応じて編纂できる、凄腕編集者なのかもしれません。
概要はdoksyo-tekなりのもので、本書はここには書ききれない様々な示唆や事例、具体的方法論にあふれています。興味のある方は、ご一読することをおススメします。
最後に、気に入ったフレーズをご紹介しておきたいと思います。
p33
読書活動や本と人を結びつける活動、相談・回答サービスなど既存のものも新しい視点で見直し、科学的な知見などに学び、またほかの自治体や諸外国の試みなどを参照して、新たな挑戦とすることもできるだろう。
p113
図書館は、将来、図書館のなかに、地域の人々の交流の空間を作り、知的な交流のなかから新しい知恵を生み出し、地域に貢献する場にならなければならない。
p179
公的な資金を投入して地域社会が運営しているのである。そこでは誰もが知識・情報を共有して、そのなかから社会にとって有用な新たな知識・情報を生み出し、社会に還元するという視点に最も重きを置かなければならない。
オマケ
これを読むと、政策としての図書館が見えてくる!?かも。
▼大串 夏身著「調べるって楽しい!―インターネットに情報源を探す」(青弓社)
▼猪谷 千香著「つながる図書館: コミュニティの核をめざす試み (ちくま新書)」(筑摩書房)
↑これ、読んでいるところです。元記者さんだけあって、丁寧な記述がとてもリアルでいいです。
『戦略読書』定点観測 - 2016年6月
はじめに
戦略読書・6月の定点観測です。
図1は、読書ポートフォリオ・マトリクス(PRM)を整理したものです。
定点観測(2016/06)
上記RPMに基づいて実施した6月の定点観測結果です。
ビジネス基礎
なし
ビジネス応用
現代の図書館の状況と課題を非常にわかりやすく解説。特にネットが発達している昨今、図書館はどのように知的創造に寄与できるか、という視点は知っておいて損はないし、なにより図書館をもっと活用してやろうという気がしてくる。著者の方とお話ししてみたいなぁ。
非ビジネス基礎
▼新明解国語辞典,梅 佳代著「うめ版 新明解国語辞典×梅佳代」(三省堂)
市井の人々が見せるオモシロな瞬間を切り取った写真集。でも、ただ面白いだけじゃない。梅佳代さんの愛情というか、人が好きなんだろうなーって気持ちも伝わってくる、あったかい写真集。ずっと手元に置いておきたい。
いわずと知れた三谷幸喜さんのエッセイ集。三谷さんのきめ細やかな作品がどんな日常から生まれてくるのか、なんとなく垣間見ることができるような、できないような。それはさておき、この人、本当に奥さんのこと大好きなんだなーってことも伝わってくる、ナイスエッセイでした。
▼こうの史代著「夕凪の街 桜の国 (アクションコミックス)」(双葉社)
わかりやすいがゆえに、とてつもない難題を突き付けてくる、骨太なマンガでした。短いのに、心にずっしりとのしかかるもの。そして、それは過去から現在まで、脈々と受け継がれていく。さて、我々はどうしたものか。夏も近いし、真剣に考えてもいいと思った。
▼末次由紀著「ちはやふる(1) (BE・LOVEコミックス)」(講談社)
かるた、百人一首って中高生の頃に授業でやったのみで、ほぼまったく覚えていない。競技かるたってジャンルもあまり意識したことなかったけど、これを読むとエキサイティングだし、百人一首もっと知りたくなってきました。2巻以降も読むぞ~。
▼NHK「地球イチバン」制作班,影嶋 裕一著「WHAT IS SAPEUR ?――貧しくも世界一エレガントなコンゴの男たち」(祥伝社)
TVスピンアウト本。紙質が若干残念だったけど、コンゴ・サプールの超絶カッコイイ、気高い見栄っ張りな感じを十分に堪能することができた。ここまでくると、もはや哲学者のようだ。
▼石川 文洋著「カラー版 ベトナム 戦争と平和 (岩波新書 新赤版 (962))」(岩波書店)
ベトナム戦争におけるアメリカの誤りは、「近代兵器の威力を信じすぎたこと」「アメリカの援助に支えられた政権が民間人の支持を得られなかったこと」「外国支配に対する反発と民族独立の精神の底力を見抜けなかったこと」。地獄の黙示録も併せて見ておきたい。
▼朝日新聞出版著「サザエさん 2016 春 (週刊朝日増刊)」(朝日新聞出版)
朝日新聞のサザエさんに関するコラムや、長谷川町子さんとサトウサンペイさんの対談等もついており、雑誌とは思えないお得さ!永遠の四コマ漫画だよなぁ。
非ビジネス新規
▼勝間和代著「読書進化論 人はウェブで変わるのか。本はウェブに負けたのか(小学館101新書)」(小学館)
読書感想文を書いてみたので、「書評『読書進化論』」をご参考になさってくださいませ。
▼筒井康隆,安原義人,ことのは出版著「日本以外全部沈没」(ことのは出版)
Audibleのコンテンツ。電車で聞きました。思いのほか、テンションが高くて、朝からハラハラしてしまった。
▼ヒュー・ロフティング,河合 祥一郎,KADOKAWA,寺田 ちひろ著「寺田ちひろ朗読「新訳 ドリトル先生航海記」」(KADOKAWA)
▼ヒュー・ロフティング,河合 祥一郎,KADOKAWA,川田 裕美著「川田裕美朗読「新訳 ドリトル先生アフリカへ行く」」(KADOKAWA)
Audible版。久しぶりにドリトル先生でも聞いてみるか、と聞いたものの、登場人物とかアウトラインとか、読み返すことができずに話が進んでいくので、けっこう頭を使いました。これ、どうせならフルバージョンで聞いてみたいなぁ。何時間くらいで消費できるんだろ。
▼遠藤周作,遠藤周作,ことのは出版著「初夏の雑談」(ことのは出版)
Audible版。大好きな遠藤周作の肉声、初めて聞いた。予想より、ずっとダンディでかっこいい声だった。なんか、あったかいユーモアがあって、でもユーモアだけじゃなくて、物事を深く考えているからこそ紡ぎだされる言葉が、とてもよかった。これはいろいろな方に聞いてもらいたい雑談でした。
分析
以下は、6月のRPM分布と、累積(1~6月)のRPM分布です。
今のところ、1~6月の累積で84冊・190.5時間を読書に費やしています。予測値は年間168冊(月平均14冊)、総読書時間381時間(月平均31.75時間)であり、目標の100冊・400時間に対して、読書時間がやや足りない感じです。
今月の気づき。気づき? 6月は、audibleを導入してみました。プライム会員は3ヶ月無料(プライムじゃなくても1ヶ月お試しできます)なので、今はお試し期間になります。
doksyo-tekの場合、通勤電車の中で読書することが多いのですが(どう読書時間をひねり出すかは、「『戦略読書』実践記(1)」で考察)、どうも、耳で聞く行為に慣れていないようで、ついついぼんやりと聞き流してしまい、何の話をしているのかわからなくなることもしばしばでした。
しかしながら、新たな読書の一手法としてぜひとも使いこなしたいジャンルなので(両手が使える、耳を鍛える等)、引き続き、使いこなし術を追求してみたいと思っています。
さて、『戦略読書』をはじめてから半年が経ちました。半年記については、これまでの統計を見ながら、別の機会にまとめてみたいと思います!
参考
イベントレポート「日仏フォーラム 《書籍とデジタル》」
はじめに
書籍の形態の変化と、新しい読書の方法について知りたくて、6/13(月)、国立国会図書館のイベントに参加しました。終日のイベントだったのですが、都合上午前中のみの聴講でした。片手落ちではありますが、まとめと感想を書いてみます。
イベントでdoksyo-tekが参加したのは、基調講演と第1セッションです。他にも、長期アクセス保証の話や出版ビジネスの話等、聞いておきたい内容が盛りだくさんだったのですが、無念の中座でした。
以下、各セッションのまとめと感想です。
基調講演
養老孟司さんが語る本の話。非常にシンプルに、わかりやすく脳と本の関係を示唆してくれたと思います。
まず、脳は図1のような処理をしているそうです。つまり、感覚を通じて得られる意識が扱うものは、情報そのものである。情報は、①時間が経っても変わらず、また、②感覚によって訂正されていく。
感覚を通じた入力をx、意識(情報)をyとすると、「同じ」と感じる状態はy=xで、「個性」はxの係数aと考えられます(y=ax)。係数aが正なら好きだし、aが負なら嫌いになるわけです。
この、等号で結んで意識(情報)を交換できるのは、人間に備わっている特有の機能なのだとおっしゃっていました。
と、ここで講演時間切れになってしまったのですが、この先の話を想像してみると、本は記号(情報)の集合で成り立っているので、先のy=axが成り立つ。係数aという意見を持って、本の中身を他者と交換(議論)できるわけです。これって、たぶん脳にはフィードバックとしての感覚があり、それがまた意識を形成していく、ということなのだろうと思います。
第1セッション
「デジタル時代の創作と読書」というテーマで、著者やクリエイターがパネルセッションを行いました。テーマを作り手/本/読み手に分けて、それぞれの現状と課題の共有が試みられました。
登壇者
- Therry Baccino氏(パリ第8大学教授)
- デバイスが人間の読む行為に与える影響等を研究
- Julie Stephen Chheng氏(アーティスト)
- 紙と電子で仕掛け絵本等を制作
- 藤井太洋氏(作家)
- 平野啓一郎氏(作家)
- 近年ではネットで小説の断片を共有する「マチネの終わりに」を出版
- 井芹昌信氏(株式会社インプレスR&D社長)
- 部数の少ない本を出版するNext Publishingというサービスを展開
- 林智彦氏(朝日新聞社)
- 電子出版に詳しい。司会進行
作り手の視点
例えば「プロとアマの境界線はいわゆる文学賞が担っている」「出版物の評価体系やジャンルは紙に基づいている」「制作コストとしての編集/ブランド/販促力の捉え方は、出版社とセルフパブリッシングで異なっている」といった状況があります。
これらは、制作過程で紙にデジタルが入り込む、もしくはデジタルから紙が生まれることで、より複雑になっているのかもしれない。そのへんのデザインをどうするか、といった課題が示唆されました。
本
ここでは、本はデジタルによってどんな変化があるか、デジタルの向き不向きな状況が共有されました。いくつかの例を箇条書きにしてみますと、以下のようなものが挙げられます。
- アート作品のようなデジタル×紙の本は、使い方や評価が難しい(Chheng)
- ARのように、紙に重畳するデジタルは説明的であり、やりすぎるとゲームになってしまう(Baccino)
- リニアな読書体験が小説的だとすると、ノンリニアな読書体験は雑誌ではないか。ただ、雑誌的な実験小説は読者のうけが悪かった。(平野)
- マルチメディアの組み合わせで読書体験が深まると思われがちだが、脳はマルチタスクではない。情報の順路や専門書の文書構造等、リニアなほうが読書は深まる(Baccino)
- 読書の観点では、ハイパーテキストの理解は難しい(Baccino)
展望
登壇者が一人ずつ一言で創作と読書について、今後の展望を語ってくれました。
- Baccino:デバイス次第。人間工学的レイアウト(自分にとって読みやすいレイアウト)がポイントだ
- Chheng:本とデジタルは別々の進化を遂げるのではないか
- 藤井:コンタクトレンズで読書する世界になる
- 平野:(amazonでは既に始まっているが)電子書籍はクラウドから配分される
- 井芹:紙とウェブをつなぐ、オーサライズド機能(ISBN付番等)が発達する
感想
雨の中、会場まで行くのが大変だったのですが、とても有意義な時間が過ごせました。
ただ、日仏フォーラムなので、もう少し日仏の違いとか、日仏での紙・デジタルの関係比較などをしてもよかったのかも、と思いました(午後のセッションで議論されてたのかな)。
また、登壇者に著者や制作者が多かったため、どうしても作り手の視点での話が白熱しました。確かに作り手の視点に立脚しないと見えてこない面も多いとは思いますが、もう少し、新しい本の形態で新しい読書をする「読者」の視点で議論があってもよかったかもしれないと思いました。
とはいえ、デジタルプラットフォームは既存の商流をまったく新しいものに作り変える力を持っています。出版の世界にも、その波は確実に押し寄せているのだということを感じられるエキサイティングなイベントでした。
なお、このイベントはアーカイブ配信(そのうち音声だけになるらしい)がされているので、興味を持たれた方は、視聴をおススメします。自分も、後半戦楽しみに見ようと思います。
日仏フォーラム 「書籍とデジタル」 | NIKKEI CHANNEL
おまけ
参加セッションで名前が挙がっていた書籍を並べてみます(たぶん聞き漏らしあり)。どれも読んでみたいですが、特に世界一美しい本は、DVDもついている力作なので、ぜひとも手に入れたいところです。
▼『考える人』編集部/テレビマンユニオン 編著「世界一美しい本を作る男~シュタイデルとの旅 DVDブック」(新潮社)
読書的ニュース 2016-06
2016年6月の読書的ニュースです。
▼モリサワのウェブフォント、「さくらのレンタルサーバ」利用者は無償で利用可能に - CNET Japan
へー。EPUBのHTML5/CSS3と併せて、ブラウザ読書が広がると面白いんだけどなぁ。
▼アマゾンが秘密にする物流センターの正体 | インターネット | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準
顧客に早くかつ簡便に届けようとするAmazonの配送戦略まとめ。配送は消費立地型でスピードを重視し、購買簡便化はAmazon Dash、Amazon Echo等の仕掛けが投入されている。最近は、大学構内にも荷物のピックアップポイントを設けているようだ。大好きAmazon、いつもお世話になってます!
▼本のしおりになる読書用ライトが極薄で画期的|ギズモード・ジャパン
くるっとつなげると光るしおり。導電性インクと薄型LEDで実現。でも、これ、点灯させるには別途電池(CR2032)を付けなくちゃダメっぽい。スタイリッシュなだけに、なんだか惜しい感があるなぁ。
▼創造性を刺激したいなら紙で読もう。詳細な情報を求めているときはデジタルがオススメ | ライフハッカー[日本版]
抽象的な解釈は紙で、具体的な詳細情報の解釈にはデジタルが向いている。という住み分けがなされているらしい。とても気になる。これは論文にあたって、実験内容を見てみないと!
これが元記事で、
記事の元になったのは、ACM CHI2016の論文だ!
▼目が良くないと読めない?札幌の「思わず見入ってしまう看板」とは | CuRAZY [クレイジー]
この発想はおもしろい! 興味喚起にランドルト環を使っちゃうあたりのセンスがすごいなぁ。読み物もあえて難読化してあったほうが引き込まれることもあるのかな。
視覚実験としては『本を読むときに何が起きているのか』にかなりヒントが載っていますが、『紙葉の家』もなかなか前衛的でおもしろい本でした。
▼ピーター・メンデルサンド,山本貴光,細谷由依子著「本を読むときに何が起きているのか ことばとビジュアルの間、目と頭の間」(フィルムアート社)
▼マーク・Z. ダニエレブスキー,Mark Z. Danielewski,嶋田 洋一著「紙葉の家」(ソニーマガジンズ)
▼オードリー若林が『ご本、出しときますね?』で引き出す、作家たちの素顔 | 日刊サイゾー
オードリー若林さんの番組紹介。以前、読書芸人に出てて、この人、本好きなんだなぁと思ったのだが、まさか作家とトークする番組まで作っていたとは。これは見てみたい。でも、BSジャパンなんだよなぁ。地上波かネットでやらないかな。
▼本を片手にのんびりと過ごしたい。【那須高原】の素敵なカフェ8選 | キナリノ
最近、じめじめしてて暑いし、こういうところで一日読書にふけりたい。ふけりたい。持って行く本は知識系じゃないな。心に染み入る、あったかい物語がいいな。
▼ハリーポッターの丸めがね型ブックマーク【Metal Book Bookmark Harry Potter glasses】|インテリアハック
ハリーポッターのめがねしおり。しおりネタは今月2度目。LEDしおりもいいけど、めがねしおりも、プレゼントされたらうれしい。そうそう、しおりといえば、次の記事が面白かったです。いろいろありますねぇ。
▼普通に読んてちゃもったいない!読書の効果をグンと上げる読み方のコツ - ライブドアニュース
読書効果を高める方法が3点。以下意訳すると、
- 内容を自分の言葉で物語化する
- 内容を誰かに説明する
- 複数回、各回スピードを変えて読む
この記事に限ったことではないのですが、「読書に効く7つの方法」とか「効果を高める3つの読書法」のようなトピックって、書かれていることは正しそうなのだけど、いかんせん評価が少ない。経験則的な話に仕立てるよりも、参考文献を付けるとか、実験結果はこうなってます、とかしたほうが、説得感がより増すと思います。
▼Researchers Reveal Booxtream's Digital Watermark DRM | The Digital Reader
ソーシャルDRM(つまり電子透かし)の話。booxtream.txtにDRMの全容が書かれているらしいが、まだ目を通していない。独自のDRMを施して、長期保存性が損なわれるよりはいい気がする。コンテンツの著作権管理って根深いよなぁ。
▼TV Room "Wallpapered" Top to Bottom in Books | The Digital Reader
前、滝のように流れ出る本の芸術作品を見た時もビビったけど、これもなかなかハゲシイです。カラフルな装丁と本の先にある知識。1つ1つはバラバラなんだけど、とても統一感があって、好きだなぁ。
▼ヤマザキマリさん、読書の魅力語る : 文化 : 読売新聞(YOMIURI ONLINE)
せっかくいいイベントだったぽいのに、記事はあまりにも上手にまとめられているため、どんな内容だったのか、イマイチ伝わってきませんでした。。。こういう時こそ、現地参加できない人たちのためにYouTubeやUSTREAMでアーカイブ配信すると、効果は絶大だと思います!
▼Facebook is predicting the end of the written word — Quartz
テキスト・画像・映像・音声はそれぞれ特性が異なるメディアなので、適材適所で使用する、が正解だよね(書いてて当たり前だと思った)。まぁ、SNSは入力の手間と伝搬しやすさを考えると、画像映像系との親和性が高い気がします。
書評『読書進化論』
著者は評論家として有名な勝間和代さんです。今から10年近く前の本(2008年刊)ですが、『読書進化論』というタイトルに惹かれ、読んでみました。
概要
本書は大きく4部構成になっています。まず(1)「読書で人が進化する」とは何かについて述べられています。次に(2)読む、(3)書く、(4)売るの視点でそれぞれ当事者はどう進化すべきか、考察が加えられています。また、巻末には勝間さんが影響を受けた作家リストや書籍中の参考文献リストが付いています。
読書で人が進化するとは
勝間さんが考える読書で人が進化する本質とは何か。それは「疑似体験」ができること。本は、他者が試行錯誤して得た知識や経験を、コンパクトに一通り学べるよう設計されたメディアなのだ、ということです。また、他のメディアと比べ、集中・沈黙状態を要する読書は、知識定着の観点からも優れているのかもしれません。
読む
疑似体験を「読む」ために、読者はどう進化していくべきか、論じています。ここで一貫しているのは進化は突然やってこないということ。
勝間さんはフォトリーディングと呼ばれる速読法を広めていることもあり、早く読む術ばかり注目されがちですが、その実、「読む」に近道なしのような地道な手法を提唱しています。
つまり、
- 文書構造を把握する
- わかっていることからちょっとずれているくらいが面白い
- 同時に同じテーマを併読する
- 速読は、自分の知っている部分は読み飛ばしてもよいが、それがないなら最初からきちんと読む
といった具合に、読書は丁寧に5冊、10冊、20冊と読み重ねることで、少しずつ進化させていくものだと捉えています。
書く
「書く」についても、スタンスは「読む」と同じで、「進化とは、突然変異ではなく、徐々に積み重ねられた技術や労力が一定水準を超えたときに始まるものです(p.150)」。と述べています。
と言うものの、コツはあるようで、読みやすく・分かりやすく書くコツを4点ほど挙げていました。
- 技術①「自分の事例」「アンソロジー形式」を利用して親しみを持たせる
- 技術②「役に立つフレーズ」を必ず入れ、読書だけに体験を閉じない
- 技術③「共通体験」や「流通していることば」を使って行動を促す
- 技術④「コンテンツ力」と「編集力」で進化していく
本書ではこれらを駆使することで、豊富な経験談(いい意味での「与太話」)が形成されていく旨が述べられています。
売る
「読む」や「書く」が人間の内面の進化だとすると、「売る」は外面、他者とつながるための進化だと言えるかもしれません。
勝間さんは、出版メディアはマーケティングの4Pでいうところの、流通チャネル(Place)と広報宣伝(Promotion)が弱いと指摘しています。
確かに、日用雑貨や食料品で普通に行われているマーケティングの手法を、そのまま本に適用するだけで、他者へのリーチは大幅に変わってくる気がします。そして、このあたりは、ウェブ上の新しい技術やサービスが補完してくれる部分なのかもしれません。
所感
この本はタイトル副題に「人はウェブで変わるのか。本はウェブに負けたのか」とありますが、思ったほどウェブの話が出てこなかった気がします。
しかしながら、この本が出版されてから約10年、ウェブは電子出版やコミュニケーション技術など、目を見張る進化を遂げています。それに伴い、本質(=疑似体験)は変わらないものの、読書を取り巻く環境(読む・書く・売る共に)は大幅に進化しています。10年前と比較して、変わった点/変わらなかった点を並べて検証、考察してみるのも面白いかと思います。
その意味で、ご興味のある方は、ぜひ手にして実際読まれることをおススメします。
最後に、彼女の読書に対する姿勢を端的に示した一節のご紹介。
p22
よく、「本を読め、本を読め」といいますが、「読んだ本の成果は仕事や生活で活用しなければならない」と、私はずっと思ってきました。
なぜ読むのか。その根源をシンプルに述べている気がします。読書=疑似体験⇒活用。この心地よいポジティブさこそ、普遍的なものなのかもしれません。
▼勝間 和代著「読書進化論‾人はウェブで変わるのか。本はウェブに負けたのか‾ (小学館101新書)」(小学館)
おまけ
本書の参考文献からdoksyo-tekが読んでみたい本を数点ピックアップしてみました。
▼P F ドラッカー,上田 惇生著「ネクスト・ソサエティ」(ダイヤモンド社)
▼中島 義道著「ひとを〈嫌う〉ということ (角川文庫)」(KADOKAWA / 角川書店)
▼J・モーティマー・アドラー,V・チャールズ・ドーレン,外山 滋比古,槇 未知子著「本を読む本 (講談社学術文庫)」(講談社)